2020年12月議会における、後藤香織の一般質問の内容です。
2020.12.11「専修学校における留学生の受け入れについて」
▶後藤香織
みなさん、おはようございます。
民主県政クラブ県議団 早良区選出の後藤香織です。
本日は「専修学校における留学生の受け入れについて」質問をいたします。
2008年、国は「留学生30万人計画」を策定し、2010年に「就学」ビザを廃止、「留学」ビザに一本化した上で、専修学校の入学定員に占める留学生の割合を50%以下としてきたものを撤廃するなど、規制緩和をしました。
その結果、2019年には外国人留学生の総数は約31万人と、目標としていた30万人を超えました。
中でも、専修学校専門課程に在籍する留学生は2014年より急増し、2019年5月時点での、前年度比の増加率は、学種別に見た場合、16.8%増と最も高く、大幅に増加しています。
しかし、留学生30万人計画は達成されたものの、一部の学校においては留学生をビジネスチャンスと捉え、安易に受け入れていることが問題視されています。
実際に2018年9月には、大阪市の専修学校が主に日本人を対象として認可を受けたものの、実際はベトナムや中国国籍の方を主に募集し、定員418人に対し約560人が在籍。
大阪府や大阪入国管理局に定員超過を指摘され、同年4月に入学した留学生など165人が退学となっていることが発覚し、問題になりました。
さらに、2019年6月には東京福祉大学が2016~18年度に約1万2千人の留学生を受け入れ、うち1610人が所在不明、700人が退学、178人が除籍になっていたとして、文部科学省が公表し、「多数の留学生の安易かつ不適切な受入れや不十分な在籍管理が大量の所在不明者、不法残留者等の発生を招いており、大学の責任は重大」として受け入れを当面停止するよう指導があったことが大きく報道されました。
日本で学びたい留学生が多いことはよいことではありますが、こういったことは結果として、留学生本人の不利益にもつながるとともに、教育の質の低下や本来の留学目的で来日する留学生も含めた、留学生制度自体や受入側の教育機関の社会的信頼を失うことにもつながります。
適正な規模で、十分な教育を受け、日本や母国で活躍していただけるように、しっかり支援をしてくことが、本来あるべき留学生制度であり、真の多文化共生社会といえます。
この点を踏まえ、以下6点質問をいたしますが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国規制等の影響もあり、留学生は昨年より人数が減少する見通しがあるものの、コロナの収束後はその反動で大幅に増加するのではないかとの懸念もされています。
その際に、専修学校が適切に受入れができる環境を整えるべく、知事には真摯なご答弁をよろしくお願いいたします。
まずはじめに、本県での専修学校における留学生の受け入れの現状についてお伺いします。
2019年5月1日時点で、県内の大学等に在籍する留学生の数は、19,629人と、東京、大阪に次いで3番目に多くなっています。
そこで1点目に、留学生を受け入れている専修学校は県内に何校あり、在籍する留学生は何人いるのか、また、在籍している生徒のうち、留学生の占める割合が50%以上の学校数、90%以上、全生徒が留学生となっている学校数を、それぞれお示しください。
▶知事
県では、全ての専修学校を対象に毎年実施している基本情報調査において、留学生の受け入れ人数の報告を求めており、今年5月現在、県内150校のうち62校で、6222人の留学生を受け入れています。
このうち、留学生が在籍生徒の50%以上を占める学校は15校、90%以上を占める学校は4校、全生徒が留学生の学校は2校となっています。
▶後藤香織
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、母国からの仕送りが減ったり、アルバイトがなくなるなど、留学生の生活は例年より厳しくなっています。
コロナの影響を受けた外国人留学生については、緊急小口資金などの特例貸付や特別定額給付金などが利用可能となっていますが、「学生支援緊急給付金」は日本人学生と異なり、留学生のみ一定の出席率や成績評価などの条件が付けられました。
そもそも外国人留学生は、奨学金なども日本人学生に比べ、受けられる制度が少なく、特に専修学校に在籍する留学生は顕著にその支援制度が少ないといえます。
こういった金銭面、住居といった生活等への支援や語学の問題があり、外国人留学生は、日本人の学生よりも退学や除籍が多い傾向にあります。文部科学省の2014年の調査では、国公私立四年制大学・短期大学の中途退学者の占める割合は2.12%となっています。
そこで2点目に、専修学校における留学生の退学・除籍の状況はどうなっているのか、また、その例年の傾向についてお示しください。
▶知事
留学生の退学・除籍の状況については、国の通知に基づき、昨年度から、入学定員の2分の1を超えて留学生を受け入れる専修学校に報告を求めており、 今年5月現在、10校で336人の留学生が退学・除籍しています。
これは入学を許可した留学生の6.7%であり、昨年5月報告の7.1%と同程度でした。
▶後藤香織
次に、専修学校の在籍管理に対する県の対応についてお聞きします。
専修学校においても、入学時の日本語能力や経費支弁能力を十分に確認せず、入学を許可するといった、いわゆる「ビザ専」と呼ばれる専修学校が問題視されています。
これまでも2010年に文部科学省は「専門学校における留学生管理等の徹底について」を通知し、専修学校は、受け入れ体制等に応じた適正な受入れや出欠席を徹底管理するなど、適切に在籍管理をすることとし、県は所管の専修学校に指導をするよう通知しています。
また、先に述べた2019年の東京福祉大の所在不明事案を契機に文部科学省は「留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」を取りまとめました。
これまでの安易な受入れはしないこと等に加えて、専修学校についても、所轄庁である県が入学時に日本語能力試験N2相当の日本語能力をきちんと求めているかなどの情報把握をし、地方出入国在留管理局へ提供するよう求めています。
そこで3点目に、これらの通知等に基づき、県はこれまでどのように専修学校に指導をおこなったのか、また県はどのようにその状況を把握しているのか、具体的にお答えください。
▶知事
県としては、専修学校からの報告により受入れ状況を把握し、国の通知に基づき、専修学校において留学生の連絡先や出席状況を把握するなど、適切に留学生の管理を行うよう指導しているところです。
▶後藤香織
専修学校から入学を許可された留学生の場合、原則として簡素な手続きでの入国・在留が認められ、2年の在留期間が付与されます。
このように、在留資格を取得しやすい状況にありながら、在学中および退学・除籍後の所在不明や卒業後の進路が不明で出国の事実がない者は
不法残留、資格外活動の許可をとらずにアルバイトをしたり、週28時間の時間を超えてアルバイトをした場合に不法就労に該当する場合があり、学校等での指導が十分でない場合、留学生本人が知らない間に違法行為をしてしまう危険性をはらんでいます。
そして、この不法残留率が全留学生数のうち5%を超えた場合などは入国管理局より「非適正校」として判定を受けることになり、その学校に入学する際などの入国・在留審査が厳格化されることとなります。
そこで、4点目に、福岡出入国在留管理局から「非適正校」の在籍管理能力判定を受けた専修学校は何校あるのでしょうか、その上で、「非適正校」の判定を受けた場合に、県はどのように報告を受け、その専修学校に対し、どういった指導をしているのか、お聞きします。
▶知事
出入国在留管理局においては、不法残留者や在留資格が取り消された者が一定の割合を超えた場合は、その在籍する専修学校を「非適性校」と判定しています。
県では、国の通知に基づき、入学定員の2分の1を超えて留学生を受け入れる専修学校に、出入国在留管理局の判定結果を添付して報告するよう求めていますが、現在のところ、「非適性校」と判定されている専修学校はありません。
▶後藤香織
続いて5点目に、現在にいたるまで、専修学校の留学生の受け入れに関して、県が学校に指導をするような、問題事案はあったのでしょうか、また、問題事案が発生した場合に、福岡出入国在留管理局との情報共有等の連携をどのように図っているのでしょうか、お聞きします。
▶知事
国の通知において、出入国在留管理局において、「非適性校」と判定されたことが過去4年間に2回以上ある場合、生活指導を行う専任教師が配置されていないなど、留学生を受け入れる組織体制が十分でない場合、定期報告等が提出されない場合のいずれかに該当する場合は、問題事案とされているが、
本県では、これまでこのような事案はありません。
問題事案が発生した場合には、県は、専修学校に対し、留学生の受入れが入学定員の2分の1を超えないよう指導することとされています。その際、県は、出入国在留管理局から事実関係を確認し、連携して対応してまいります。
▶後藤香織
最後に、留学生を受け入れる専修学校およびその教職員への支援についておききします。
留学生の受入れにおいては、入管法等の留学生関係法令や文科省通知等の熟知といった日本人学生の受入れとは異なる特別な知識や留学生に対する様々な配慮が必要となります。
そのためにも受け入れをする専修学校に受け入れ時の留意点や留学生の生活指導などに関するガイドラインを示し、留学生がきちんとした教育を受けられる環境を整えていくことが、留学生の退学等を防ぐ上でも重要だと考えます。
そこで、この項の最後に、県は、留学生を受け入れる専修学校やその教職員に対して、留学生の受け入れに関するガイドラインを示した上で、専修学校の留学生受入れについての県独自の実態調査を行うべきと考えますが、知事の見解をお伺いします。
▶知事
国においては、専修学校が留学生を受け入れる際に、入学者選抜において日本語能力や生活費などの支弁能力について十分な管理を行うこと、留学生の連絡先や出席状況を把握するなど適切な在籍管理を行うこと、生活習慣や緊急時の対処法など生活指導を行い、アルバイトの就業状況を把握するなど、具体的留意事項を定めています。
このため県では、この留意事項を専修学校に周知し、学校が留学生の状況を把握し、在世区管理や生活指導等を適切に行うよう、指導しているところです。
県としては、この指導に沿った留学生の管理が適切に行われているかどうかについて、毎年実施している全ての専修学校を対象とした基本情報調査において把握してまいります。
▶後藤香織
知事からは、専修学校に在籍する留学生の状況に対して、これまで入学定員の2分の1を超えて留学生を受け入れる専修学校のみ状況把握をしていたものを、全ての専修学校において把握をする、との答弁がありました。
実態把握をすすめることが、問題事案の発生の予防や留学生の人権を守ることにもつながります。
今回は留学生の受入れの課題を取り上げましたが、私の友人にも学生想いの熱意ある日本語教師、留学生を受け入れる専門学校の経営者がいます。
きちんと留学生に教育をしている学校や先生たちまでもが同じように見られないためにもしっかりと実態把握をよろしくお願いいたします。
ここで、1点要望をさせていただきます。
平成31年4月に出された「私立専門学校における留学生の受入れ状況の把握に関する都道府県の取組についての調査結果とそれを踏まえた一層の取組について」によると、
他県では、留学生数が多い学校に地方入国管理局と合同での実地調査、独自の管理指針の制定、関係機関などとの連絡協議会の設置をしている事例もあります。
本県は全国で3位の留学生を抱えていることからも、こういった他県の事例を参考に、より一層の取組をしていただくことを要望して、私の一般質問を終わります。
※注意:質疑応答をわかりやすくするため、発言の順番を実際の議会とは変更し記載しております※
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