2021年6月議会における、後藤香織の一般質問の内容です。
2021.6.15「防災対策の強化について」
1.室見川の浸水被害防止
2.避難所運営のあり方
▶後藤香織
みなさん、こんにちは。民主県政クラブ県議団 早良区選出の後藤香織です。
本日は「防災対策の強化について」河川と避難所の2つの観点から質問をいたします。
ご存じの通り、福岡県は4年連続豪雨に見舞われ、2017年の九州北部豪雨、令和2年7月豪雨では県内に大きな被害を与えました。
この梅雨の時期、河川沿川に住む県民の皆さんが、河川の氾濫に不安を持つことなく、安心に過ごせるよう、河川における浸水被害防止の取組について、中でも今回は、私の地元早良区を流れる室見川について、知事にお聞きします。
脊振山系を源流とする室見川は、県管理の2級河川であり、春の桜、初夏の潮干狩り、秋の室見川灯明(とうみょう)まつりなど四季折々の表情を見せ、市民の憩いの場となっています。
その一方で、豪雨による氾濫という面も忘れてはいけません。
県が、2018年4月に公表した室見川の洪水浸水想定区域図によると、北は早良区百道・西区小戸から南は早良区早良まで、東は早良区高取から西は西区下山門まで広範囲にわたる氾濫による浸水が想定がされています。
実際に、過去に室見川は、1963(S38)年の福岡大水害で、河川が氾濫し、周辺地域に大きな被害をもたらしました。これを受け、県では、1963(S38)年度から1968(S43)年度にかけて河川改修を実施しており、それ以降、氾濫はしていません。
しかし、近年の気候変動もあり、2018年7月豪雨時には、もう少しで氾濫というところまで水位があがりました。その後の大雨でも氾濫危険水位を超えるほどの水流が確認されています。
室見川沿川に住む多くの住民は不安を抱え、これまでも福岡市や、早良区および西区の室見川沿川の自治協議会会長が連名で県に要望をしてきました。
こういった要望も受け、県では、2018年より、小田部大橋の下流から橋本橋付近、矢倉橋付近から松風橋付近までといった区間の浚渫、つまり川底の土砂を取り除き、水が流れる面積を確保することで、洪水時の水位を低下させる対策をしてきました。
そこでまず1点目に、室見川を含む県管理河川では、どういった場合に浚渫を行うのか、その方針についてお示しください。
▶知事
河川の流下能力を維持するため、浚渫は大変重要であると認識しており、所轄の県土整備事務所が河川巡視や地元要望をもとに、治水上の安全度を判断し、実施しています。
▶後藤香織
次に、河川改修の過程について伺います。
今年度も、室見川水系の金屑川が都市基盤河川改修事業により、河川改修が予定されており、県もその改修費用を一部負担しています。しかし、これは、県ではなく、福岡市が事業を進めているものです。
洪水等による災害発生の防止または軽減など、河川整備の方向性を示す「河川整備基本方針」と、これに基づき、実際の河川工事の種類や施工場所など具体的な計画を示す「河川整備計画」は、河川法第16条により、2級河川においては、県が定めておかなければならないとされています。
しかし、室見川はこの基本方針、整備計画が未策定であり、1968年以降、約50年間で一度も河川改修が行われていません。
また、これまで県議会においても、2018年7月豪雨以降、早良区・西区選出の先輩県議の皆さまが室見川の河川改修や浚渫について要望、2018年9月定例会では、当時の小川知事は「河川整備基本方針、その策定作業を現在進めているところでございます」と答弁しています。
そこで2点目に、室見川において、早急な河川整備方針の策定が必要だと考えますが、知事の認識をお聞きします。その上で、県内二級水系の現在の策定状況および室見川の将来的な計画である河川整備方針について、2018年9月以降の進捗状況はどうなっているのか、お聞きします。
▶知事
河川整備基本方針は、河川の治水、利水、環境に関する長期的な整備の方針で、河川法上定められたものであり、大変重要であると考えています。
県内二級河川については、平成9年の河川法の改正を受けて、国土交通省をはじめ関係機関との協議や学識経験者からなる検討委員会での議論などを経ながら、順次、策定しています。
現在52水系のうち、18水系で策定済みであり、室見川を含む5水系について、策定作業を進めています。
平成30年9月以降の室見川水系の進歩状況ですが、現在、国土交通省と協議を行っているところであり、今後もしっかり取り組んでまいります。
▶後藤香織
次に、流域治水について伺います。
本年4月28日に「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律案」いわゆる流域治水関連法が国会で成立。本県でも5月26日・28日に流域治水協議会が開かれました。
過去130年の日本の治水政策の転換点であると、大変期待をされています。これから先の動きについては、今後も引き続き、注視していきたいと思っています。
県も、県管理の2級水系について、2021年度末までに「流域治水プロジェクト」を策定するとしていますが、河川整備基本方針を現在策定中の水系においても「流域治水プロジェクト」が策定されるということで、その整合性がとれているのか、流域治水と河川改修では、流域治水が優先されるのではないかとの印象を持ちます。
そこで「河川整備基本方針」と新たな「流域治水プロジェクト」を同時に策定する場合、どちらかが優先されることがあるのでしょうか、お尋ねします。
▶知事
「流域治水プロジェクト」は、河川管理者が実施するこれまでの治水対策だけでは対応できない状況が頻発してきていることから、あらゆる管理者による取組の全体像を取りまとめたものです。
今後、流域治水の推進を図ってまいりますが、河道拡幅や築堤といった河川整備は、治水対策の根幹として引き続き不可欠であり、その整備の将来像を取りまとめた「河川整備基本方針」の重要性には変わりはありません。
県民の「いのち」と「くらし」を守り、安全安心な生活を確保するためには、どちらも同じように重要であり、優先度に差はないと考えています。
引き続き、「河川整備基本方針」と「流域治水プロジェクト」の策定を進めてまいります。
▶後藤香織
この項の最後に、県は、政令市である福岡市をはじめとする周辺自治体とどのように連携し、室見川が含まれる「福岡・前原・那珂圏域」の流域治水プロジェクトを策定していくのか、今の状況とあわせてお答えください。
また今後流域治水対策にどのように取り組んでいくのか、お聞かせください。
▶知事
室見川が含まれる「福岡・前原・那珂圏域の流域治水プロジェクト」については、5月28日に、国、県、圏域内の15市町からなる流域治水協議会を設置し、今年度末までに策定することとしています。
県は、この協議会において、福岡市をはじめとする圏域の市町が主体性をもって流域治水に取り組むよう、技術的助言や市町村間の広域的な調整を図ってまいります。
また、流域内のあらゆる関係者と一体となって、流域治水プロジェクトに係る「はん濫をできるだけ防ぐ・減らす」「被害対象を減少させる」「被害の軽減、早期復旧、復興」の3つの対策に取り組み、流域治水の推進を図ってまいります。
▶後藤香織
次に、浸水想定区域・土砂災害警戒区域にある学校についてお聞きします。
本年6月8日に、文部科学省は「浸水想定区域・土砂災害警戒区域に立地する学校に関する調査の結果について」発表しました。
これによると要配慮者利用施設として位置づけられた学校で、浸水想定区域および土砂災害警戒区域に立地している学校は全国で全体の約3割程度あることが明らかになりました。
本県でも、全公立学校1,233校のうち、土砂災害警戒区域に立地する学校は、140校・11.4%、浸水想定区域に立地する学校においては365校・29.6%で全国で10番目に多くなっています。
国も、発災時に、児童生徒等の安全の確保、避難所としての運営、学校教育活動の早期再開等に支障のないよう、学校設置者が水害・土砂災害対策を実施することは重要と述べています。
子どもたちをどのように守るのか、早急な避難確保計画の作成や学校の施設改修が急がれます。
そこで、県立学校の状況について教育長にお伺いします。
まず、この文部科学省調査結果における本県の県立学校の状況はどうなっているのかお聞きします。その上で、浸水想定区域・土砂災害警戒区域に立地する県立学校に対し、施設改修といったハード面、避難確保計画・避難訓練といったソフト面に対し、どのような対策をしているのか。今後どのように取り組んでいくのか、お聞きします
▶教育長
本年6月に公表された文部科学省調査結果では、浸水想定区域の県立学校は119校中8校で6.7%、土砂災害警戒区域は5校で4.2%です。
これら全ての学校においては、床のかさ上げ、キュービクルや重要書類の保管場所を上層階とするなど、必要な対策を行っています。
また、対象となる学校には、避難確保計画の作成及び、その計画に基づく避難訓練や防災教育を実施するよう指導しており、全ての学校が作成・実施しています。今後ともこれらの対策や指導を引き続き行ってまいります。
▶後藤香織
次に、避難所のあり方について、知事にお聞きします。
避難所は、市町村が指定するもので、県民の命と生活を守り、災害による2次被害を防ぐためにも、食事、電源の確保はもちろん、プライバシーの確保、ペットとともに避難できる避難所の設置など、様々なニーズにもできうる限り答えていく必要があります。
そこで、指定避難所における非常用電源、プライバシーに配慮した間仕切りができる資機材のそれぞれの整備状況についてお示しください。その上で全ての指定避難所にこれら整備が進むよう、県は促進にむけてどう取り組むのかお答えください。
▶知事
今年4月現在、県内の指定避難所2,750施設のうち、749施設で非常用電源やポータブル発電機、非常用バッテリーが整備されています。
また、間仕切りについては、指定避難所752施設において備蓄されています。
非常用電源等の整備や間仕切りの備蓄がされていない指定避難所については、市町村の庁舎等の備蓄や市町村と民間業者との協定等により確保されることとなっています。
また、「災害時における福岡県内市町村間の相互応援協定に関する基本協定」に基づき、他市町村から借り受けることも可能となっています。
なお、県として、非常用電源が正常に作動するか、出水期に合わせて点検するよう、市町村へ注意喚起を行っています。
県においても、消防学校や総合庁舎用に発電機62台、間仕切り346台を備蓄しており、市町村からの要請に応じて貸し出すこととなっています。また、民間事業者との協定により、市町村へ速やかに貸し出せる体制を整備しています。
県としては、引き続き、副市長村長会議や防災担当課長会議等において、日頃から資機材の必要数や備蓄状況を確認するなど、指定避難所における資機材の整備が適切に行われるよう働きかけてまいります。
▶後藤香織
次に、男女共同参画の視点からの避難所運営についてお聞きします。
内閣府男女共同参画局は、昨年2020年5月に「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」を公表しました。
このガイドラインでは、避難所の責任者には男女両方を配置する、性暴力・DV防止ポスターを避難所の見やすい場所に掲示する、などが示され、避難生活における女性の安全・安心の確保を求めています。
本県では、2021年3月に「福岡県避難所運営マニュアル作成指針」を改訂しました。県内の自治体はこの指針を元に、自らの自治体のマニュアルを作成します。
そこで、このガイドラインの内容が県の指針に反映されているのか、その上で避難所での女性や子どもに対する性被害も含めた暴力防止など、避難生活における女性の安全・安心の確保のためにどのような取組を行っているのか、お聞きします。
▶知事
県では、平成29年、市町村が適切に避難所を運営できるよう、「福岡県避難所運営マニュアル作成指針」を策定しており、女性の安全・安心の確保に関する内容を盛り込んでいます。
今年3月には、昨年5月に策定された国の「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」を踏まえ、避難所運営を行う組織の3割以上を女性とすることなど、避難所運営に女性の視点を取り入れやすくなるよう、指針を改定したところです。
また、昨年度、指定避難所の運営に携わる市町村長や自主防災組織リーダー等を対象とした研修において、「避難所における女性への配慮」等についての講演を行い、意識の醸成に努めています。
加えて、自治会や自主防災組織の役員等を対象に、男女共同参画の視点を持って災害対応を行うことができる人材の育成を目的とした講座を、今年度から開催します。
さらに、市町村と連携し実施してきた、自主防災組織のリーダー等を対象とした避難所運営訓練において、今年度から女性専用のスペース設置や性暴力・DV防止ポスターの掲示など、女性や子どもの安全・安心を確保するための内容を取り入れることとしています。
引き続き、こうした取組により、女性や子供の安全・安心を確保した避難所運営が適切に行われるよう、努めてまいります。
▶後藤香織
この項の最後に、ペットの同行避難についてお聞きします。
本県では2017年3月に「福岡県災害時ペット救護マニュアル」を策定しました。
この中で、県の役割として、災害発生時に飼い主による同行避難や適正な飼養管理が行えるよう、平常時から飼い主に対する啓発等の対策を講じ、県下全域における一体性を有した被災ペット救護体制の整備をすること、また、市町村の役割として、飼い主がペットと同行避難後、避難所におけるペットの受け入れやペットスペースにおける飼育管理方法等について、体制を整備することなど、具体的な方針を示しました。
県が本年2月に調査したところ、災害時のペット対策について、体制を整備し、地域防災計画やマニュアル等に記載している市町村は、60市町村のうち45市町村、75.0%であったとのことです。
令和2年7月豪雨で被害が大きかった大牟田市では、ペットがいたので避難をしなかったとの声が多く聞かれたことから、ペットの同行避難に対して、県内でもいち早く取組を始めており、市の広報誌にペット避難の状況を一覧で掲載しています。
これによると市内50の避難所のうち、受入可は4か所、避難者が多い場合などは対応不可が28か所、対応不可が18か所となっています。
このようにペットの同行避難について、体制を整備し、計画等に記載があっても、広さなどの事情で、全ての避難所でペットを受け入れられる訳ではありません。体制を整備した場合であっても、必要に応じて、見直しを行い、より良いものに作り上げていく必要があると思います。
そこで、このような状況も踏まえ、ペットの同行避難を推進していく観点から、県として今後のどのような取組を行っていくのか、お聞きします。
▶知事
災害時にペットと同行避難することは、動物愛護の観点から重要と考えています。このため、飼い主に対しては、平素から同行避難に必要な備えをしておくことの大切さについて、県のホームページに掲載するとともに、動物愛護教室等の機会を通じ、周知啓発を行っているところです。
同行避難したペットを避難所に円滑に受け入れるためには、市町村があらかじめ受入体制を整備しておく必要があります。
このため、市町村に対しては、平成29年に県が策定した「福岡県災害時ペット救護マニュアル」を参考に受入体制を整備し、また、整備した体制については、地域防災計画等に記載するよう、働きかけてまいりました。
しかし、同行避難の重要性に対する理解が十分でないことなどから、調査時点で、15の市町村において受入体制が整備されていません。今後15市町村に対しては、速やかに体制整備できるよう、個別に必要な助言、指導を行ってまいります。
また、体制を整備し、すでに計画等に記載している市町村に対しては、定めた計画等が実際に機能するかどうか机上訓練等により検証し、必要に応じて見直しを行うよう働きかけてまいります。
これらの取組を通じて、災害時におけるペットの同行避難の推進を図ってまいります。
▶後藤香織
室見川について要望をさせていただきます。
福岡大学で河川工学を専門とする渡辺亮一教授は、令和2年7月豪雨で球磨川流域を襲った線状降水帯が福岡市を襲った場合、県が管理する2級河川はすべてが至る所で溢れると警鐘しています。
室見川沿川住民が求めているのは、災害後の復旧工事ではなく、事前に災害を防ぐ工事です。
実際に、その工事にかかる労力や年月、経費を考えても容易でないことは理解しています。しかし、災害が起きてからでは遅いのです。
知事からは「しっかり取り組んでまいる」との答弁をいただきましたが、人命を守るためにも、室見川の河川整備基本方針と、それに基づいて作られる河川整備計画の早期の策定、および、引き続きの浚渫工事を重ねて強く要望します。
また今回、避難所において配慮が必要、かつ避難を躊躇する可能性が高い女性や子ども、ペットなどの対応についてお聞きしました。
先ほどご答弁があったように、間仕切りや非常用電源などもすべての指定避難所で整備が進んでいない中、災害の規模や避難の長期化などによっては、既存の避難所だけでは限界があるように感じます。
三重県いなべ市などでは、災害用キャンピングカー事業を行う企業と連携協力に関する包括協定を締結して、移動できる避難所や仮設住宅として活用する取組を始めています。
指定避難所における引き続きの体制整備に加え、こういったキャンピングカーの活用などにより、配慮が必要な方々が安心して避難生活ができる取組に期待をいたしまして、私の一般質問を終わります。
ご清聴、ありがとうございました。
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