2022年2月議会における、後藤香織の一般質問の内容です。

2022.3.7「2040年問題と持続可能な介護保険制度について」

▶後藤香織

2040年問題と持続可能な介護保険制度について、お聞きします。

2040年問題とは、少子化による急速な人口減少と団塊ジュニア世代が65歳以上になることにより、高齢者人口が最大となる2040年頃に、日本社会が直面すると予測されている内政上の危機のことで、具体的には、2025年から2040年のわずか15年の間に、20歳~64歳の現役世代人口が約1,000万人も減少するとされており、世代間の不均衡が著しくなります。

さらに、現役世代人口が急速に減少するにもかかわらず、75歳以上人口は増加をし続け、2054年には、国民4人のうち1人が75歳以上の高齢者という未知の領域に突入すると推測されています。

その時、介護保険制度も含めた社会保障制度をどのように持続可能な制度にしてくのか、私たちは次世代に大きな課題をまわしてはなりません。

この観点から、以下、質問していきます。

現在の介護保険制度では、40歳から64歳までの第2号被保険者の方々が、65歳以上の第1号被保険者の、要介護認定の方々を支え続けることができなければ、維持が難しいのが現状です。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」によると、本県の40歳~64歳までのおおよその人口は、2020年から2040年の20年間で165万人から142万人と、約23万人減少する一方で、65歳以上は144万人から158万人と約14万人増加し、40歳から64歳の人口を上回る見込みです。

そこでまずはじめに、本県の要介護者について2020年の実数値と要介護認定率をお示しください。
その上で、県は2040年の推計値と要介護認定率をどのようにみこんでいるのか、見解をお聞きします。
さらに、この現状を踏まえたうえで、現役世代が減少する中、介護保険制度の持続可能性をどのように担保していくつもりか、知事のお考えをお示しください。

 

▶知事

本県における要介護認定者数は、令和2年(2020年)で約27万人、要介護認定率は19.1%となっています。

令和22年(2040年)については、福岡県高齢者保健福祉計画において、約38万人、24.7%と推計しています。

今後、要支援・要介護状態となる可能性が高くなる75歳以上の高齢者や、認知症高齢者、高齢者単身世帯、高齢者夫婦世帯の増加が予想されており、介護給付費は、一層増加することが見込まれます。

県としては、介護保険制度の持続可能性を確保するため、引き続き要介護認定やケアマネジメント等の適正化を図るとともに、市町村が行う介護予防の取組を支援するなど、介護給付費の伸びの抑制につながる取組を進めてまいります。

また、毎年国に対し、介護保険財政における保険料と国・地方の負担の在り方を含め、介護保険制度が将来にわたり安定したものとなるよう、必要な制度の改善を図るよう求めているところであります。

 

▶後藤香織

次に、本年度4月に改正された介護保険制度について、2点、お聞きします。

この改正では、これまでの「地域包括ケア」から「地域共生社会の実現」という大きな方向性が示され、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対する包括的な支援や認知症施策の総合的な推進などが掲げられました。

そこで2点目に、認知症施策の総合的な推進について、施策の地域間格差の解消や認知症の方やご家族に対する一体的な支援が求められていますが、本県での取り組み状況についてお伺いします。

 

▶知事

県内どの地域でも認知症施策が適切に受けられるようにするため、県では、

・認知症の進行状況に合わせた支援内容を地域ごとにまとめた「認知症ケアパス」の作成
・認知症の方とその御家族や地域住民など、誰もが気軽に参加できる「認知症カフェ」の設置

といった施策が、県内すべての市町村で実施されるよう促してきたところであります。

昨年3月末時点の実施市町村数は、「認知症ケアパス」が54、「認知症カフェ」が55でありましたが、現在いずれも56に増加しています。

引き続き、未実施の市町村に対して個別に働きかけを行ってまいります。

次に、認知症の方とその御家族に対する一体的支援についてでありますが、国は、市町村を実施主体とする地域支援事業の新たなメニューとして、「認知症の人と家族の一体的支援事業」を来年度から開始します。

この一体的支援事業は、本人支援、家族支援、両者の交流支援を一連のプログラムとして行うものであり、家族の介護負担を軽減し、認知症の方の在宅生活の安定に資することをねらいとしています。

県では、市町村職員向けの研修会などの機会を捉えて、この事業を周知してまいります。

 

▶後藤香織

今回の制度改正では、高額介護サービス費の負担限度額や資産基準などが変更となり、利用者の負担額が大きくなっています。

介護保険加入者の収入は9段階に区分されており、低所得の高齢者を対象に、高齢者施設の食費や居住費の補助を行う補足給付制度があり、非課税世帯である第1~第3段階がその対象となっています。

この補足給付について、ショートステイで食費の日額利用者負担額が、第2段階で390円から600円に増、第3段階で650円から1000円もしくは1300円と増額します。

保険料の未納が続くと、最終的に介護サービスが受けられなくなります。

この第2、第3段階の介護保険料の未納者が増えており、利用者負担額の設定自体が無理のあるものではないか、と危惧する声を耳にしたところです。

そこで3点目に、本県の1号保険料の未納者の直近の状況とそのうち、第2段階、第3段階における未納者の状況についてお聞きします。
その上で、非課税世帯に対する全体の自己負担増について、知事はどうお考えかその認識を伺います。
この方々への支援が必要だと考えますが、いかがでしょうか、お尋ねします。

 

▶知事

本県の令和元年度の第1号保険料未納者の普通徴収対象者に占める割合は17.9%となっており、そのうち、非課税世帯である第2段階及び第3段階の方の割合はそれぞれ20.9%、22.5%となっています。

令和3年8月からの改正では、非課税世帯である第2段階及び第3段階の方を対象に、在宅で介護を受ける方と施設入所の方との公平性や、一定額以上の収入額や預貯金額をお持ちの方の負担能力に応じた負担を図る観点から、見直しが行われました。

その結果、費用が増加する方が生じていますが、県としては、保険料の上昇を可能な限り抑えつつ、制度を持続可能なものとするため、見直しが行われたものと考えています。

このような方に対する支援としては、社会福祉法人が利用者負担を軽減する事業を行っています。

県では、この軽減額の8分の1を助成しており、未実施の法人に対し、事業の実施を促してまいります。

また、保険者が独自に行う保険料の減免制度もあることから、社会福祉法人の軽減措置とあわせて、利用者への周知を図ってまいります。

 

▶後藤香織

次に、介護人材の確保について、お聞きします。

本県について、年齢別人口推計を見ると、20~64歳人口は2040年に約234.8万人となり、2020年と比較して約17.5%減少する見込みです。

一方で、介護人材の必要量については「第9次福岡県高齢者保健福祉計画」によると、2025年度97,525人と見込み、毎年度1,900人の介護職員の増を図る、としています。

さらに、介護職員の有効求人倍率については、2019年度では、平均 3.56 倍で、全産業の平均1.52倍より高くなっている状況にあります。

つまり、介護職員の必要数は増加するのに対し、20~64歳人口は減少して行く中で、離職率が高く、常に人材不足が続く介護人材を、今後も永続的に確保していくことができるのか、懸念されます。

そこで4点目に、本県の永続的な介護人材の確保に対する課題について、知事の見解をお聞きします。その上で、その課題に対し、今後どのように取り組み、人材確保を図るのか、お答えください。

 

▶知事

団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年に向けて、高齢者の増加と現役世代の減少が見込まれています。

介護サービス需要の増加が想定される中、介護人材を安定的に確保していくには、介護分野への人材参入を促進すること、働きやすい職場環境を整備すること、介護職員の賃金を改善することなどが課題であると考えています。

県では、介護業務未経験の元気な高齢者などへの研修と職業紹介の一体的な実施や介護福祉士を目指す外国人留学生の確保など、多様な人材の介護分野への参入促進に取り組んでいます。

また、介護ロボットやICTの導入支援による働きやすい職場環境の整備や介護職員処遇改善加算の取得促進による賃金の改善などに取り組んでいるところであり、今後もこうした取組により、介護人材の確保をしっかりと進めてまいります。

 

▶後藤香織

これまで述べてきた、認知症総合支援、介護人材の確保など、高齢者の自立支援・重度化防止等の取組や県による市町村支援の取組を一層促すべく、2018年に「保険者機能強化推進交付金」が創設されました。

この交付金は、各自治体が国のチェックシートに合わせて自己採点をし、全国の自治体の結果と比較し、交付額が決定します。

加えて2020年度には、介護予防・健康づくりに資する取組を支援するための「介護保険保険者努力支援交付金」が創設されました。

これらはいわば、自治体の介護に関する政策の「通知表」のようなものです。

これまでの調整交付金に加え、努力した自治体が報われ、財政インセンティブが付与されるとともに、その結果が公表されることとなっています。今年度は、9月末に自己評価を国に提出し、12月末頃に県に令和4年度の交付見込額が提示されています。

介護保険制度を維持していくためにも、この交付金を活用していくことが肝要だと考えます。

そこでこの項の最後に、令和4年度分の保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金に係る評価結果と福岡県の全国順位、およびその交付見込額と全国の順位について、それぞれお聞きします。
その上で、この結果に対する知事の分析・見解と、より一層の取組について、お考えをお聞きします。

 

▶知事

本県の令和4年度交付金に係る評価結果は、全国で47位、交付見込額は、2,258万3千円で全国41位となっています。

この交付金は、自治体への財政的インセンティブとして、国が毎年6月頃、評価指標を示し、その年の9月に、予定も含めて取組を自己評価して国に報告し、その結果に応じ交付されるものであります。

当該交付金が創設された平成30年度の本県の評価結果は、全国で6位でありましたが、その後、32位、35位、37位と、毎年順位を下げてきました。

これは、当初、本県の事業は国の示す指標を満たすものが多くありましたが、その後、指標が見直されたものの、本県では指標で示された市町村ごとの課題の把握や支援など、それに対応した取組ができていなかったことによるものと考えています。

早急に改善を図るため、直ちに、関係課で対策チームを編成し、指標ごとに対策の検討を行い、今年9月の評価時点においては、国の示す指標に対応した市町村へのきめ細かな支援ができるよう取り組んでまいります。

 

▶後藤香織

1点、要望をさせていただきます。

知事からは「保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金」の評価結果について、本県は年々全国順位が下がり、令和4年度分は、全国最下位であることが示されました。

この結果は公表されるため、本県が介護に関する対策に消極的であるとも捉え兼ねられません。

この交付金の創立主旨でもある、高齢者の自立支援、重度化防止、介護予防等の取組の推進は、介護保険制度の維持に欠かせないものです。

市町村ごとの課題の把握やその支援をしっかりと行っていただき、これまでの「引き続き」の取組ではなく、新たな対策の強化を要望して、私の一般質問を終わります。

ご清聴、ありがとうございました。

※この質問を西日本新聞の朝刊にて紹介していただきました。

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