2022年9月定例会・決算特別委員会における後藤香織の質問内容です。
2022.10.4 「部落差別の完全撤廃にむけた本県の取組について」
▶後藤香織
民主県政クラブ県議団 早良区選出の後藤香織です。
「部落差別の完全撤廃にむけた本県の取組について」質問します。
これまでの部落差別の完全撤廃に向けた動きについては、本県では、1995年に『福岡県部落差別事象の発生の防止に関する条例』を制定し、結婚や就職の際の部落差別事象の発生の防止をはじめ同和問題の解決に努めてきました。
国では、部落差別は許されないものであるとした『部落差別の解消の推進に関する法律』いわゆる「部落差別解消推進法」が2016年12月に施行され、地方公共団体は、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものと規定されました。
これを受け、県では、先ほど述べた条例を改正し、2019年3月1日から、新たに『福岡県部落差別の解消の推進に関する条例』が施行されました。
このように、部落差別の撤廃、併せてあらゆる差別の完全撤廃に向けた取り組みを県を挙げて進めています。
同条例の第一条「目的」には、「この条例は、現在もなお差別落書きや差別につながる土地の調査などの部落差別が存在すること、及び、インターネットの普及をはじめとした情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ、全ての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法 及び 部落差別解消推進法 の理念にのっとり、部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題である」と謳ってあります。
しかしながら、今日、この目的、趣旨の通り、部落差別が解消に向かっているかというと、必ずしもそうは言えない現実があります。
そこで、本県における部落差別事案の発生状況について、この10年間の推移についてお示しください。 その上で、傾向、特徴的な事案についてお示しください。
▶県側答弁
市町村からの報告分も含め県に報告があった部落差別事案の件数の推移は減少傾向にあり、平成28年度に施行された部落差別解消推進法の施行前後で比較すると、施行前の平成24年度からの5年間の平均が34件、施行後の平成29年度からの5年間の平均が22.4件となっております。
一方で、インターネットの普及に伴い、近年インターネット上の部落差別書き込みが拡大している状況があります。
県が一昨年7月から開始したインターネット上の部落差別書き込みのモニタリングでの確認件数は、今年8月末現在、3,356件確認しております。
▶後藤香織
インターネットでの差別書き込みが拡大しているとのことです。
まさに、今日のネット社会の闇の部分を反映しているのが、インターネットをつかった差別事案であると思います。
近年では、インターネットを使って部落差別を拡大、扇動するという、悪質な差別事案が発生しています。
なかでも、神奈川県に住む男性が2018年ごろからネット上で配信している動画は、各地の被差別部落を特定して録画し、ネット配信するというもので、2022年3月末時点で160か所以上の動画を作成し、配信し続けています。
その動画の再生回数は万単位、多いもので2百万回を超えています。
当人は、「世の中、いろんな趣味がある。自分の場合はちゃんと収益が出るようにもしている。」と、差別を利用して利益を上げるという卑劣な行為を、臆面もなく続けており、許されるものではありません。
そして、問題はそれにとどまらず、2016年には、全国約5千カ所の被差別部落の所在地や名称などを網羅した「地名リスト」いわゆる「部落地名総鑑」をネット上に公開しております。
更に、誰でも自由に編集できる部落問題の「ウィキサイト」も開設しており、被差別部落の関係者の情報を掲載するページには、名前や住所、電話番号などの個人情報が書き込まれています。
2021年9月にはこういったことに対し、「プライバシーを違法に侵害する」として一部の削除を命じる東京地裁判決が言い渡されましたが、当人は詫びる様子もありません。
そこで、こうしたネット上の差別行為がまかり通っている現状を、県としてどのように認識しているか、お聞かせ頂くとともに、ネット差別の規制に向けどのような対策が講じられるべきと考えているか、お示しください。
▶県側答弁
インターネット上の部落差別の氾濫は、部落差別解消に取り組む多くの人々の努力と行政のこれまでの取組を根底から覆すものであり、決して許されないものであると認識しております。
県では、モニタリングで確認した場合、直ちにサイト管理者に対して削除要請を行うとともに、書き込みがされたサイトに、「部落差別は許されないものであり、部落差別につながる書き込みは絶対しないよう」に呼びかける内容の啓発文を投稿しております。
削除されなかったものについては、法務局からも削除要請を行うよう依頼をしております。
しかし、サイト管理者に対する削除要請に強制力はなく、現行法では有効な手段が取れない状況があり、法的措置の検討等実効性のある対策が必要と考えています。
そのため、国に対し早急に対策を講じるよう要望を行っているところです。
▶後藤香織
インターネット上での人権侵害は顕著であり、更には、今日、LGBTQなど性的少数者への人権問題など、新たに顕在化しています。
先ほど課長からもあったように、県も国に対し、対策の要望をしているとのことですが、個別の人権問題の解決に向けた法整備が求められています。
ところで、我が国特有の差別である部落差別をなくすためには、国民・県民への教育や啓発が必要なことはいうまでもありません。
中でも、こうした教育や啓発を推進し、担うべき立場にある職業に従事する者の教育や研修は極めて重要です。
2011年4月1日閣議決定された『人権教育・啓発に関する基本計画』では、「人権に関わりの深い特定の職業に従事する者は、すべからく人権研修を受けなければならない。」とされています。
福岡県においては、2003年6月に『福岡県人権教育・啓発基本指針』を策定しており、これまで差別をなくすための各種施策を実施してきました。
しかし、その後も、学校、地域、家庭、職場など社会生活のさまざまな場面で、部落問題をはじめ、女性、子ども、高齢者、障がいのある人などに対する偏見や差別が見られるため、2018年3月に同指針を改定しています。
その改定指針においても同様に、特定職業従事者に対する研修の一層の充実が謳われており、この特定職業従事者というのは「人権に関わりの深い特定の職業に従事する者」とされており、一人ひとりが常に人権尊重の立場に立った職務の遂行が求められています。
そこで、特定職業従事者は、どのような職種の者か、お示しください。
また、人権教育・啓発において指導的な役割を果たす人たちと理解しますが、こうした人たちへの人権研修はどのように図られているのか、お聞きします。
▶県側答弁
国の「令和4年度人権教育・啓発白書」において、人権に関わりの深い特定の職業に従事する者として、検察職員、矯正施設職員、更生保護官署関係職員、出入国在留管理関係職員、教師・社会教育関係職員、医療関係者、福祉関係職員、海上保安官、労働行政関係職員、消防職員、警察職員、自衛官、公務員全般が挙げられています。
県職員は、新規採用時から昇任時に実施する階層別研修において、同和問題研修を行っております。
また、毎年、同和問題をはじめとする人権問題をテーマに課長級以上の職員を対象とする幹部職員研修、各所属の副課長や課長補佐等を対象とする人権・同和問題啓発推進員研修、すべての所属で実施する職場研修を実施しております。
このほか、県では、講師団講師あっせん事業の中で、特定職業従事者である国や市町村の職員、医療関係者、福祉関係職員が参加する人権研修にも講師を派遣しております。
▶後藤香織
ご答弁あったように、県指針等に基づき、人権研修を実施しているとのことですが、それにもかかわらず、県内福岡地域の県立高校において、特別講習の時間に、国の機関の職員である外部講師、特定職業従事者でもありますが、この外部講師が、部落差別発言を行うという事案が発生しています。
本来、差別をなくす、人権を学ぶという高校教育の場において、事もあろうか差別を助長し、生徒が間違った歴史観や差別意識を持つことにもつながりかねないものです。
そこで、人権・同和対策局として、この事案は把握しているか、また、把握しているのであれば、どのような事案であったのか、お答えください。
▶県側答弁
県立高校で、当該外部講師が賤称語を使った部落差別発言を行ったという報告を県教育委員会から受けました。
▶後藤香織
では、その後、県として、どのような対応を行ったのかお答えください。
▶県側答弁
この事案を受けて、部落差別発言を行った職員が所属する国の機関に対し、知事名及び教育長名の文書を手交し、強く抗議するとともに、二度とこのようなことが生じないよう、同和問題に関する人権教育・啓発を充実するよう求めました。
▶後藤香織
所属機関に対し、強く抗議し、人権教育・啓発を充実するよう、求めた、とのことです。
今回の差別事案は、生徒に対する講習の中で発生したわけですが、そこで、講習後、生徒たちはどのような反応であったのか、そして、学校として生徒たちに対し、どのような事後対応を行ったのか、お聞きします。
▶県側答弁
県教育委員会から、生徒たちは問題発言であることにすぐに気づき反応したと聞いています。
また、発言を聞いた生徒に対するアンケートには「教室の空気が凍り付き、今の発言はよくないだろうと周りの生徒に目線で語った」、「自分はそんな言葉は決して使わないし、聞いた時には間違っているということを伝えるようにしたい」といった感想が寄せられたそうです。
学校側は、生徒に対して、部落差別は絶対に許されないということを改めて伝えるとともに、差別発言をした外部講師が再び生徒の前に立つ場を設けました。
講師は、謝罪とともに、なぜそんな発言に至ってしまったのかを生徒に伝えました。
生徒たちは、今回の事案を契機に、一層、真剣に差別を自分のこととして考えるようになったと聞いています。
▶後藤香織
生徒たちはすぐに気づいたということですが、では、今回、差別発言を起こした特定職業従事者である外部講師は、人権研修を受けていなかったのでしょうか、お聞きします。
▶県側答弁
当該国の機関では、年2回の定期異動の際に人権研修を行っており、当該職員も受講していましたが、同和問題に関する研修は近年行っていなかったと聞いております。
▶後藤香織
人権研修を受けていたが、部落差別問題に関する研修は近年やっていなかった、という事ですが、それでは、その人権研修が形骸化しているのではないかと思わざるを得ません。
そこで、県として、こうした国の機関の人権研修にどのように関わっているのかお聞きします。
▶県側答弁
当該国の機関の要請を受け、差別の実態に学ぶことが重要であるとアドバイスを行いました。
その上で、同和問題をはじめとした人権問題に関する研修テキストや関係資料を提供するとともに、研修講師のあっせんを行いました。
実施された研修では、研修終了後に、受講者からは、「差別落書きの例を目の当たりにし、非常にショックを受けた」、「改めて人権の重要性を感じた」、また、講師の下に訪れ「自分の町内会でも講演を行ってほしい」との声が寄せられたなど非常に中身のある研修であったと聞いております。
今後も研修講師のあっせんなど人権研修への協力の要請を受けており、継続的な支援を行ってまいります。
▶後藤香織
ぜひよろしくお願いします。
その上で、県として、今後、特定職業従事者の人権研修をどのように充実させ、実りあるものとしていくのか、お聞きします。
最後に、本県から部落差別をはじめとするあらゆる差別を撤廃するため、人権・同和対策局長の決意をお聞きします。
▶県側答弁
今回の事案を受け、特定職業従事者のうち、国の出先機関に対する働きかけが不足していたと感じたところです。
国の職員の人権研修の現状について法務省へ確認したところ、本省レベルで実施している研修は把握しているが、出先機関レベルについては把握していないとのことでした。
このため、まずは、県内の国の出先機関における人権研修の実態を確認しているところです。
その上で、今回の事案での対応を参考に、国の出先機関へ働きかけ、各機関が行う人権研修を充実させ、受講者にとって実りある研修となるよう支援してまいります。
*2022年10月5日付の毎日新聞福岡版に掲載されました。
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