2023年12月定例会・一般質問における私の質問、「教員の働き方改革について」の内容です。
2023.12.11
Contents-目次-
小中学校における年間総授業時数と教育課程編成のあり方ついて
▶後藤香織
皆さん、こんにちは。
民主県政クラブ県議団 早良区選出の後藤香織です。
教員の働き方改革について、教育長に質問してまいります。
近年、教員の多忙化、教員不足がクローズアップされ、教員の働き方改革の必要性が叫ばれています。
子どもたち一人ひとりに向き合い、教員の業務の質の向上に資するために、教員不足の解消と、その要因でもある多忙化の解消が急務です。
現在、福岡市内でも、土曜授業を年4回から2回へ減らしたり、昼休みを10分短縮し、下校時間を早めるなどといった対策も行われていますが、抜本的な多忙化の解消には至っていません。
そこではじめに予備時数のあり方についてお聞きします。
文部科学省が告示する学習指導要領で定められた、公立の小学校・中学校が年間に行う授業時間数、つまり標準時数は、完全週休二日制がはじまった2002年当時、小学校で1年生782単位時間、2年生840、3年生910、4年生~6年生は945単位時間でしたが、2度の改正により増加し、現在では、1年生850単位時間、2年生910、3年生980、4~6年生1,015単位時間に増加しました。
中学校も同様で、980から1015単位時間へと増えています。
小学校においては、2002年と比較し全学年で70単位時間、つまり年間で52.5時間、総授業数が増加していることになります。
ことし4月、文科省は「令和4年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査」の結果を公表しました。
それによると、小学校5年生、中学校2年生の1年間の総授業時数が全国平均でそれぞれ、1,059.9単位時間、1,058.5単位時間と、国が設定している標準授業時数1,015単位時間よりも、40単位時間以上多く、さらに、計画の段階では、平均して約60単位時間も多く設定されている現状が明らかになりました。
文科省からは「災害や流行性疾患による学級閉鎖等の不測の事態に備えることのみを過剰に意識して標準授業時数を大幅に上回って教育課程を編成する必要はない」ことや「学校における働き方改革にも配慮した対応を検討することが重要」であり、県教育委員会は結果をふまえつつ、教育施策の立案や所管の学校への指導・助言等の活用について市町村教育委員会に周知する、としています。
また、中教審の「質の高い教師の確保」特別部会は、8月に緊急提言「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策」をまとめ、学校教育法施行規則が定める標準授業時数を大きく上回る教育課程を編成している小中学校が3校に1校以上の割合で存在していることを重視し、全ての学校に計画の点検と年度途中を含めた見直しを求めました。
教育課程編成の際には、各学校が、台風やインフルエンザなど不測の事態が起こって数日授業ができなくても授業時数が確保できるよう、年度当初に、標準時数を上回って予備の時数を設けます。
「予備時数」を多く確保すれば、不測の事態には備えられるものの、教員一人当たりの授業時間が長くなり、授業準備などの授業の質に資する本来業務に影響が出ているという側面もあります。
コロナ禍で学校が長期休業となった年も1年間で教育課程が終わりましたし、GIGAスクール構想の1人1台端末の配備もあり、休校になってもオンライン授業ができるようにもなりました。
また、熊本市教育委員会では、2019年度より、予備時数を20時間程度まで削減する取組を行っており、2022年度は更に0時間を基本とした編成を進めています。
本県も、教員の働き方改革の観点も踏まえ、県教育委員会が主導して、予備時数削減のための取組を進めるべきと考えます。
そこで1点目に、県内の小中学校における、年間総授業時数の状況についてお聞かせください。その上で、本県での予備時数のあり方に対する、教育長の見解をお聞かせください。
▶福岡県教育委員会教育長
本県の令和4年度における年間総授業時数の平均は、小学校5年生が約1,057、中学校2年生が約1,054単位時間となっています。
また、学校教育法施行規則が定める標準授業日数に比べ、どちらも40単位時間程度多くなっており、全国の状況と同様であります。
そのうち、文部科学省が改善を求めている70単位時間以上多い学校の割合は、小学校5年生では69校で全体の約16%、中学校2年生では21校で全体の約11%であります。
災害時の不測の事態に備えて設定する予備の時数については、過剰に見込むと児童生徒や教師の負担増加につながるものであるため、必要な範囲で適切に設定すべきものであると考えます。
授業時数の見直しに係る取組について
▶後藤香織
2点目に、県教委から各市町村教委へ通知の発出やガイドラインの策定、校長が教育課程を市町村教育委員会に提出する段階で、教育委員会が『これは多過ぎる』と言えるような後押しする政策が必要だと考えますが、予備時数削減のための今後の取組について、教育長の見解を伺います。
▶福岡県教育委員会教育長
文部科学省は今年9月に、働き方改革に配慮した教育課程の編成についての通知を発出しています。
同通知を踏まえ、県教育委員会としましても、働き方改革として取り組むべき主な事項をまとめ、市町村教育委員会に対し、積極的・主体的な実施を依頼したところであります。
また、年間総授業時数1,086単位時間以上の学校に関しては、通知表の作成など業務量が増加する学期末等には授業時数を減らすなど、今年度の見直しの工夫例に加え、例えば、週当たりの授業時数を29時間としている場合に、それを年間を通して固定することに捉われず、適切に配当するための次年度編成にあたっての工夫例を示しながら、標準授業時数を大幅に上回らないよう所管の教育委員会に個別に指導しています。
このほか、小中学校の管理職に対しても、研修会などの機会を捉え、適正な教育課程を編成するよう指導しているところであります。
今後も適正な教育課程の編成がなされるよう、これらの指導を継続してまいります。
初任者研修の見直しと業務の負担軽減について
▶後藤香織
次に、県指定の研究や発表会、初任研などについては、授業やそれ以外の業務でいっぱいの中、そのための準備や報告などが、教員の時間外労働を増やす過重な業務負担になっているとの声もあります。
2019年6月には、文科省は「教員研修計画の策定に際して、単に教員等が受講する研修の絶対量のみが増加し、教員等の多忙化に拍車をかけるようなことにならないよう」配慮するとともに「都道府県と市町村の教育委員会間等で重複した内容の研修の整理等、夏季等の長期休業期間中の業務としての研修の精選を行う」との通知を出しました。
また、ことし6月の我が会派の代表質問で、吉田教育長は「近年30歳以下の若年教員の退職者が増加しており、平成30年度の81人から、令和4年度は全体の約半数の158人となって」いる、と早期退職者の現状について答弁しています。
特に、近年退職が目立つ若年教員への負担の軽減が必要ではないでしょうか。
ことし8月に出された緊急提言も「できることを直ちに行うという考え方のもと取りまとめられています。
そこで3点目に、この通知発出後、教員研修、特に初任者研修ついてどのような見直しを行ったのかお示しください。また、県指定の研究や発表会、年に25回実施される初任研の授業研など、県教委の裁量にて軽減が可能なものについて、軽減することが望ましいと考えますが、教育長の見解をお聞きします。
▶福岡県教育委員会教育長
本県では、文部科学省通知に先立ち、平成31年度から初任者研修について、これまで採用年度に実施していた研修の内容を精選した上で3年間に分散したり、関係書類の様式を簡略化したりすることにより、教員の負担軽減を図ったところであります。
今後も、県指定の研究や発表会を含めた教員研修について、その内容や開催方法を工夫するとともに、研修に伴う事務作業の簡素化を進め、教員の負担軽減に努めてまいります。
支援スタッフの配置について
▶後藤香織
次に、教員以外の支援スタッフの配置についてお聞きします。
国際調査においても、日本の教員は、幅広い業務を担い、労働時間も長いという結果が出ており、教員にしかできない授業などの本来業務に専念してもらうためには、支援スタッフの存在が欠かせないと考えます。
文科省の調査では、教員業務支援員の配置により、教員の在校時間や「事務その他」に費やす時間が減少している結果が出ています。
また、我が会派の代表質問でもふれたとおり、不登校の児童生徒が増えています。
学校でも起きる問題も多様化・複雑化していく中で、様々な困難に対応する専門の支援スタッフの重要性が増しています。
教員と支援スタッフの役割分担を明確化した上で、その体制強化が必要と考えます。
文科省においても、それらの配置の拡充や、新規に副校長・教頭をサポートするマネジメント支援員を配置する来年度概算要求が組まれています。
そこで、教育長にお聞きします。
県内の教員業務支援員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、それぞれの配置状況についてお示しください。また来年度、それぞれどのように配置を充実していくつもりか、副校長・教頭マネジメント支援員の活用も踏まえて、お聞かせください。
▶福岡県教育委員会教育長
本県では、今年度、すべての小中学校にスクールカウンセラーを配置しているほか、支援の必要性が高い9市町にスクールソーシャルワーカーを配置しています。
また、市町村が雇用するスクールソーシャルワーカーや教員業務支援員に対する助成を行っており、スクールソーシャルワーカーは52、教員業務支援員は23の市町村がこの助成を活用しています。
来年度に向けた文部科学省の概算要求においては、多様な支援スタッフの学校教育活動への参画を推進する内容となっており、県教育委員会としましては、学校のニーズを踏まえ、働き方改革に資する支援スタッフの配置に努めてまいります。
要望
▶後藤香織
教育長に、要望をさせていただきます。
今回、予備時数削減に向けた一定の取組についてご答弁いただきました。
予備時数削減を時間数で明確に打ち出した熊本市では、実際に予備時数が削減され、成果がでています。
また、市の学力調査の結果では、小学校は全ての学年・教科に伸びが見られ、予備時数削減による負の影響は見られないとしています。
小学校の採用試験の倍率が1.3と低い本県が教員志望の若者に選ばれるためには、教員の多忙化解消に向けた県教委の本気度が足りないと感じています。
予備時数削減や業務軽減など、現場の教員が改善の効果を実感できる、より一層の取組を、お願いをいたしまして、私の一般質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。
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