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2024年6月定例会・一般質問における私の質問、「養育費の確保支援について」の内容です。

2024.6.17

本県の母子世帯の現状と養育費の重要性について

▶後藤香織

ことし5月、離婚後も父と母双方が子どもの親権を持つ「共同親権」を可能とする改正民法が、可決・成立しました。

新しい民法では、面会交流など離婚後の子どもの生活に関わるルールの変更や養育費についても盛りこまれました。しかし、DVや虐待継続の可能性、子どもの意見尊重など、様々な課題が残ったままである、と私は思っています。

今回は関連して、特に、不払いが問題となっている養育費について、知事にお聞きします。

こども家庭庁「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、全国のひとり親世帯の状況は、母子世帯119.5万世帯、父子世帯14.9万世帯で、ともに85%以上が働いているにもかかわらず、その平均年間収入は、母子272万円、父子518万円であり、母子世帯の収入が低いのが現状です。

養育費を受け取る世帯については、母子93%、父子7%と、多くの世帯で、父親から母親に養育費が支払われており、その平均額は約5万円となっています。

また「令和4年国民生活基礎調査」では、2021年の日本の子どもの相対的貧困率は11.5%なのに対し、ひとり親世帯の子どもの相対的貧困率は44.5%であり、ひとり親世帯の子どもの貧困が深刻な状況にあります。

要因の1つには、男女の賃金格差に加え、養育費の不払いが挙げられます。子どもの貧困を防止するためにも、養育費をより多くの子どもたちが受け取れることが重要だという観点から、以下、質問してまいります。

まずはじめに、本県の母子世帯の現状について、離婚により、ひとり親となった世帯数とそのうち養育費の取り決めをしている割合、また養育費の受給状況について、お示しください。

その上で、養育費の重要性について知事の認識をお示しください。

 

▶知事

令和3年度に県及び両政令市が1万100世帯の母子世帯に対して実施した「ひとり親世帯等実態調査」から推計した県内母子世帯6万8,025世帯のうち、離婚により母子世帯となった世帯は5万2,660世帯となって
います。

このうち、養育費について取り決めている割合は53.2%、養育費を受け取っている割合は32%となっています。

養育費は、こどもが経済的・社会的に自立するまでに要する衣食住、教育、医療などに必要な経費であり、こどもの健やかな成長にとって、極めて重要なものであると認識しています。

その支払いは、親として子に対する最低限の義務であり、離れて暮らす親と子を結ぶ絆、親子である証となるものであります。

 

養育費確保の取組みについて

▶後藤香織

次に、現在の県の取組と成果について、お聞きします。

本県では、ひとり親の方々のさまざまな相談に対応し、個々の状況に応じた支援につなげる「福岡県ひとり親サポートセンター」を設置して養育費の相談にも対応している他、まずは養育費をどうしたらよいか、となった際に相談するための「養育費・ひとり親110番」や弁護士クーポンの配布を行っています。

また2022年度からは、養育費の取り決めを支援する「福岡県養育費に関する公正証書等作成支援事業」を実施しています。

しかし、当事者の私の友人たちもそのことを知らず、養育費を必要とする方々にその支援の情報が届いていないのではないかと考えます。

そこで2点目に、「福岡県ひとり親サポートセンター」「養育費・ひとり親110番」「弁護士クーポン」に係る、昨年度の養育費に関する相談実績についてお聞かせください。

また「福岡県養育費に関する公正証書等作成支援事業」について、どのような支援を行っているのか、実績とあわせてお聞かせください。

これらを必要とする方々にしっかり届くよう、更なる周知が必要と考えますが、今後の取組をお聞かせください。

 

▶知事

養育費相談の実績については、県内3か所に設置している「ひとり親サポートセンター」に、「養育費について取決めをせずに離婚したが、どうしたらいいだろうか」などの相談が昨年度214件寄せられました。

また、弁護士による2か月に1回の集中電話相談「養育費・ひとり親110番」には、43件の相談があり、相談者の都合の良い時間と場所で無料の弁護士相談が受けられる「弁護士クーポン」は68枚配布しました。

また、令和4年度からは、養育費の確保を図るため、養育費の支払いと支払が滞った場合に強制執行を受けることに同意する旨を定めた公正証書の作成費用について助成を行っており、昨年度の実績は33件となっています。

離婚を考えている方やひとり親の方が適切な支援につながるよう、ひとり親サポートセンターについて、県のホームページやSNSで発信するほか、

・ 市町村のSNS、広報誌への掲載
・ 保育所や市町村の子育て支援センター、病児保育施設等でのチラシの掲示

などにより周知を図っています。

また、「養育費・ひとり親110番」や養育費確保のための公正証書作成費用の助成などの具体的事業については、

・ ひとり親サポートセンターのAIチャットボットやLINEでの発信
・ 福岡県弁護士会が主催する離婚問題を扱う弁護士向けの研修での紹介と周知依頼

などを通じて、情報発信を行っています。

今後は、離婚届が提出される際に保護者に対し、養育費についての相談窓口等が掲載されたひとり親家庭向けハンドブックを、市町村を通じて配布することとしています。

こうした周知を行うことにより、養育費が確保されるよう取り組んでまいります。

 

養育費の不払い対策等について

▶後藤香織

養育費不払いへの確保支援について、世界の状況をみると、例えば、アメリカでは国や州による給与差し押さえなど、スウェーデンでは国からの養育費補助、フランスやフィンランドでは、公的機関が立替・回収を行う制度となっています。

日本では、こういった公が養育費を保証する制度ではなく、あくまでも自助的な制度となっており、これが養育費の不払いの多さにもつながっていると考えます。

このような中、この度、改正された新しい民法では、2年後から、養育費に関して、支払いが滞った際に他の債権に優先して強制執行ができる「先取(さきどり)特権」や、父母が養育費に関する取り決めをせずに離婚した場合でも養育費を請求できる「法定養育費制度」などが新設される予定です。

自助的な制度の中でも前進の兆しが見えましたが、結局は、受け取れない方が、行動をしなければならない制度になっていることには、違いがありません。

私は、今回の質問にあたり、シングル当事者の方々からご意見をお伺いしました。そこでは、養育費の受け取りについて、当事者の方々からは、罰則がないため、離婚した相手が「約束通りに支払わない」「理由をつけて減額してくる」「子育ての実費には到底及ばない」などの声があり、約半数の方が養育費の不払いや減額に悩んでおられました。

養育費が不払いの場合に、確保するための強制執行に関する手続きは時間も労力もかかります。

日常から、仕事や子育てに加え、様々な問題を一人で背負うことの多いひとり親が、養育費確保のための強制執行の手続きなどを自力で行うのは、身体的・精神的にも大変な負担であり、例えば、県など、公的機関による立替払い・回収などといった支援がほしい、という切実な声も多くお聞きしました。

そこでこの項の最後に、今後、養育費の不払いへの対策として、どんなことを考えているのか、また、県が立替払い・回収を行うことなどを検討してはどうかと考えますが、知事の考えをお聞かせ下さい。

以上、知事のこどもたちに向けた心あたたまる答弁をよろしくお願いいたします。

 

▶知事

「ひとり親サポートセンター」では、専門の相談員が養育費の不払いや強制執行に係る手続きについての相談に応じていますが、今年度から、相談者が安心してスムーズに手続きできるよう、裁判所への同行支援に取り組みます。

養育費の額や財産分与などの法律問題については、弁護士が相談に対応しています。

また、児童扶養手当を受給している方を対象に、公正証書等で取り決めた養育費の支払いが滞った際、保証会社が立替払いと相手方への督促を行う「養育費保証契約」の締結にかかる初回契約料を助成しているところであります。

こうした取組により、ひとり親の方の養育費確保に係る負担軽減を図っているところであります。

養育費を県が立て替えて支払うことは、確実な償還が見込まれない中、本来当事者が負担すべき養育費を県民全体で負担することが合理的か、別居している親の養育放棄といったモラルハザードにつながらないか、児童扶養手
当等の公的給付との関係をどのように考えるか等の観点から、慎重に考える必要があります。

 

要望

▶後藤香織

養育費の不払い対策等について、要望をさせていただきます。

本県では、約7割が養育費を受け取れていない状況で、知事からは、養育費確保のため、今後は、離婚届が出される際にひとり親家庭向けハンドブックを配布することと、「ひとり親サポートセンター」で裁判所への同行支援に取り組む、と2つの新たな取組について答弁がありました。

また、保証会社が立替払いと相手方への督促を行う「養育費保証制度」についても答弁がありました。

この「養育費保証制度」は答弁にあったように、児童扶養手当受給者が対象となっておりますが、離婚後に実家に戻ったり、年収の関係で児童扶養手当がもらえないひとり親もいます。

また、保証会社が行うとのことで保証金の支払いも受け取る側に負担となります。

制度にそういった課題があると思います。

今後は、受け取れない側が大変にならない、そしてより多くの方が利用できるように、使いやすい幅広い制度設計へと見直しをしていただきたく、要望します。

子どもたちに確実に養育費を届けるためには公的な助けが必要です。

昨年7月に全国知事会が提言を出されているように、知事には、改めて養育費の支払いの滞らない仕組みづくりを、ぜひ国にも要望をしていただくようお願い申し上げ、私の一般質問を終わります。

ご清聴ありがとうございました。

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