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2024年9月定例会・一般質問における私の質問、「望まない妊娠をした女性への支援と性知識の普及啓発の取組について」の内容です。

2024.9.13

「赤ちゃんポスト」「内密出産」の取組について

▶後藤香織

皆さま、おはようございます。
民主県政クラブ県議団 早良区選出の後藤香織です。

「望まない妊娠をした女性への支援と性知識の普及啓発の取組について」知事、および教育長にお聞きします。

我が会派は本年7月、熊本市にある「慈恵病院」を訪問し、「こうのとりのゆりかご」、いわゆる「赤ちゃんポスト」を視察しました。

この「こうのとりのゆりかご」の目的は、第一に、子どもの生命を守ること、そして、様々な理由で育児が困難な社会的に孤立した親が、人工妊娠中絶や、新生児の殺人や遺棄するといった犯罪を選択することを防ぐこと、であり、2007年4月の開設以降17年間で、あわせて179人の子どもが預けられました。

同病院は2019年12月、担当者だけに名前を明かして病院で出産し、子どもが一定の年齢になれば母親の情報を知ることができる「内密出産」の運用も2021年12月に始めています。

「こうのとりのゆりかご」に子どもを預けた理由については「生活困窮」が最も多く、次いで「未婚」、「世間体・戸籍」がそれぞれであり、いずれも「望まない妊娠の結果」が大きな要因となっています。

子ども家庭庁が発表した「こども虐待による死亡事例等の検証結果」によると、2003~2022年に虐待死した0~17歳は989人で、その半数を0歳児が占めました。

中でも、産まれた瞬間に殺されてしまう生後0日が176人と最も多く、そのうち、父親の年齢を把握できたのは43人にとどまり、父親の実態が不透明で、妊娠、出産への負担が女性に大きく偏る現状が浮き彫りになりました。

母となった女性は全て医療機関外で出産し、165人が加害者とされている一方で、父親の責任が問われることはありません。

同病院のスタッフからも「妊娠・出産に、一人で向き合わなければならない女性たちがいる。そして、女性にのみ妊娠という現実が押し付けられている。

その結果として「赤ちゃんポスト」、「内密出産」にすがらざるをえない、ぎりぎりの判断をせざるを得ない女性たちがいる。」という、過酷な現実をお聞きました。

私が以前、一般質問で指摘した「特定妊婦母子支援事業」のように望まない妊娠をした女性が妊娠期から相談・支援を受けられる場所を増やしていくのはもちろんですが、そこで支援に繋ぐことができなかった女性にとって、慈恵病院のような病院、施設、相談する機関が身近にあれば、新生児遺棄や児童虐待につながることは少なくなると思います。

そこでまずはじめに、女性にとって究極の〝駆け込み寺〟ともいえる慈恵病院の「赤ちゃんポスト」「内密出産」といった取組について、知事はどのような認識を持たれているのかお聞きします。

 

▶知事

この取組は、妊娠・出産に一人で思い悩み、誰にも相談できない女性や赤ちゃんを受け入れ、結果的にこどもの命の危険が回避されたという点においては、意義があるものと認識しています。

一方で、「内密出産」と「赤ちゃんポスト」には、匿名であるがゆえに、

・母親を市町村の産婦健診や産後ケアに繋げることができないこと

・こどもが将来にわたって自分の出自を知ることができない場合があること

また、「内密出産」は、医療機関で出産することができるが、「赤ちゃんポスト」は、妊婦健診を受けないまま、自宅等で誰にも知られず出産することから、母子共に命の危険があることなどの課題があると考えています。

県としては、母子の健康と安全を守るため、身元を明かしたうえで出産し、必要な支援を受けていただくことが望ましいと考えています。

このため、県内3か所に電話やSNSで相談できる窓口を設置し、専任の社会福祉士が、予期せぬ妊娠に悩む方や経済的困窮等により出産後の養育に不安を抱える方からの匿名の相談に対して、その悩みや不安を聴き取り、

・安心して出産できる医療機関を紹介できること

・看護師が病院に付き添い、状況を説明できること

・出産前後に一時的な住まいを提供できること

・妊婦健診や産婦健診、産後ケアなどの市町村の支援が受けられること

・助産師が授乳や沐浴等の方法を教えられること

・出産後どうしても育てられない場合は、養子縁組や里親制度があること

・経済的に困っていたら生活保護制度があること

などを丁寧に説明し、身元を明かして出産することを促しています。

この相談窓口の情報が支援を必要とする方に届くよう、ホームページ、SNS広告、ミニカードのコンビニ設置により、周知を図っているところであります。

今後は、相談窓口に繋がる2次元コードを掲載したステッカーやポップを作成し、高校や大学、商業施設の女性用トイレ、ドラッグストアの妊娠検査薬の販売コーナーなどに掲示することとしています。

 

10代の人工妊娠中絶実施率と性知識の普及啓発について

▶後藤香織

慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」「内密出産」の取り組みや運営にあたっては、「なぜ避妊をしなかったのか」といった心無い言葉が寄せられたとも聞きました。

こうした声の背景には、性行為にあたって、避妊の責任や妊娠のリスクを女性に押し付けている男性側の認識も色濃く反映されていると思います。

実際に、避妊等の妊娠に関わる手段においても、世界と日本では常識が大きく異なります。

例えば、避妊方法については、ピル(経口避妊薬)やミレーナ(IUS)といった女性の主体的な意思で避妊が可能な手段が世界的な主流となっています。

それに対し、日本は「コンドーム」が7割を超え、多くの場合、男性の協力に依存する、男性主体の避妊法の形態を取っているといえます。

人工妊娠中絶においても同様に、中絶の際に男性の同意が求められることや器具で胎児を掻き出す「掻把法」という人体への影響が大きい手法が主であり、体への負担が少ない「経口妊娠中絶薬」はフランス、中国では1988年にすでに承認されていましたが、日本では昨年2023年5月にようやく承認されました。

こういった日本の状況は女性にとって「セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖の健康と権利)」が保障されておらず、その結果望まない妊娠に繋がっている現実があります。

望まない妊娠の多くは、まずは人工妊娠中絶を行う可能性が高いです。

人工妊娠中絶実施率は2000年度と比較しても、年々減少傾向にありますが、福岡県は、10代の人工妊娠中絶実施率が2010年度から9年連続でワースト1位となっていました。

そこで2点目に、2019年度(令和元年度)以降の10代の人工妊娠中絶実施率と全国順位はどのように推移しているのか、お示し下さい。その上で、望まない妊娠を減らすために、若年者への性の知識普及啓発が必要と考えますが、県ではどのような取組を行っているのか、今後の取組についてもお聞かせ下さい。

 

▶知事

10代の人工妊娠中絶は、その多くが、予期しない妊娠の結果であると考えられ、これを防ぐためには、若者への性や妊娠に関する正しい知識の普及が重要であります。

このため、県では、これまで

・若者向けリーフレットの県内全ての高校2年生への配布

・LINEアカウント「性とからだのヘルプBOOKふくおか」での情報の発信

に取り組んできました。

こうした取組により、本県における、国の衛生行政報告例に基づく10代の女子人口千に対する「人工妊娠中絶実施率」と、値の小さい方からの全国順位は、

・令和元年度は、6.5で46位

・令和2年度は、5.3で45位

・令和3年度は、4.5で44位

・令和4年度は、4.4で42位

と改善傾向にあるが、依然として高い状況になっています。

このことから、さらなる改善のため、今年度、プレコンセプションケアセンターを開設し、助産師が性や妊娠・出産に関する相談に応じるとともに、

・小中高等学校の養護教諭等を対象とした研修会の開催

・大学等における性と健康に関する出前講座の実施

・大学生等と協働で作成したオンラインマンガのSNSでの発信

に取り組み、普及啓発を強化したところであります。

引き続き、こうした取組を進め、若者の予期しない妊娠の減少を図ってまいります。

 

緊急避妊薬の薬局での試験的販売について

▶後藤香織

望まない妊娠や人口妊娠中絶を回避する手段の一つに「緊急避妊薬」がありますが、現段階では、医師の診断・処方がなければ国内での入手が難しく、海外生産の「緊急避妊薬」を個人輸入により、入手することが可能となっています。

しかし、中には、有効成分が入っていないプラセボ・偽薬である場合も懸念されています。

信頼できる緊急避妊薬を女性が自身の意思で使用できるよう、多くの女性たちが、処方箋なしで薬局などで販売できる、早期のスイッチOTC化を求めています。

そこで3点目に、緊急避妊薬の薬局での試験販売がスタートしていますが、本県で購入できる薬局の地域と数、販売実績をお示し下さい。

また、その実績などを踏まえ、県内で求める多くの方に行き届くように、取扱う薬局を増やすことや、地域の拡大が必要と考えますが、今後、緊急避妊薬の薬局での販売はどのように進んでいくのか、知事にお伺いします。

 

▶知事

緊急避妊薬は、性交後72時間以内に適切に服用すれば妊娠阻止率が高い医薬品だが、現行では、医師の処方箋が必要とされています。

一方で、女性が意図しない妊娠を防ぐため、緊急避妊薬を速やかに服用できるようにすべきとの声を受け、国において、処方箋なしに購入できるように変更した際、薬局で適正に販売できるか等を検証する試験的販売を、日本
薬剤師会に委託して行っています。

本県では、北九州市内の3薬局が選定され試験的販売を行っており、昨年11月28日から今年1月31日までの販売実績は67件となっています。

今年度は、薬局数を増やし、昨年度の取組結果を踏まえ、販売に際して薬剤師が確認する内容を改善しながら、試験的販売を継続することとなっています。

その上で、国において緊急避妊薬を適切に利用できる仕組みが検討されるものと認識しています。

 

「性に関する指導資料」の改訂による指導の変化について

▶後藤香織

最後に「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づく包括的性教育の必要性について、改めて、教育長にお聞きします。

「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」は、2018年に、ユネスコが、科学的エビデンスに基づき、性教育を人権とジェンダー平等の枠組みに位置付けたもので、欧米諸国や中国、韓国、台湾でも受け入れられています。

望まない妊娠、若年者の妊娠・中絶、性感染症、性暴力・性虐待などの原因として、日本人は生殖に関する知識が先進国で最も乏しく、その結果、誤った性知識、それに基づく男性主導の性行為があるとされ、これらは、正しい性教育抜きには改善することはできません。

しかし、日本の学習指導要領は、小学5年生の理科で「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」、中学校の保健体育で「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という、いわゆる「はどめ規定」により、小・中学校では「性交」については原則、授業では取り扱わないとされています。

その範囲で、現在、体育や保健体育、道徳、特別活動などを通じて「性に関する指導」が実施されていますが、この「はどめ規定」により、相手の意思を尊重した性合意の考え方、避妊方法といった正しい性知識を学ぶ権利が阻害されているとも言えます。

2018年5月の朝日新聞の調査によれば、「セックス(性交)」という言葉自体を知る時期の9割は中学生以下、そして情報源の93.6パーセントが友人やメディアなどとの結果が出ており、子どもたちは自分を守るための正しい知識や術を得る機会がなく、間違った知識が混在した性的情報に晒されていることが伺えます。

また、2018年5月11日放送のテレビ番組「スッキリ」の調査によれば、「中学三年生に性交・避妊について詳しく授業するのはあり・なし」との質問に、4万人近い回答者のうち約9割が「あり」としており、多くの保護者たちも近年は性教育の実施を望んでいるにも関わらず、現行の学習指導要領と、若者の直面する現実や保護者の希望との間に乖離があります。

性行動が活発になる前に正しい知識を得ることが重要であり、人間の尊厳を中心に置いた、学校での包括的な性教育が重要だと考えます。

私が2020年6月議会で一般質問をした後、本県では、学校における性教育の考え方を示す「性に関する指導資料」が2022年3月に17年ぶりに改訂されました。

そこで4点目に、2022年度以降「性に関する指導資料」の改訂により、本県における「性に関する指導」はどのように変わったのか、お聞きします。

 

▶教育長

本指導資料の改訂にあたっては、大学教授や医師等で構成する「性に関する指導推進委員会」において、性情報の氾濫などの現代的課題に対応できる内容について協議を重ね、基本的な考え方や指導の留意点、Q&Aなどを刷
新するとともに、校種ごとに各教科と関連付けた指導事例などを掲載しました。

各学校においては、本資料を活用して、性の多様性への理解やインターネットを介した性被害の防止に関する指導など、より実践的な指導の充実が図られています。

 

「包括的性教育」への対応について

▶後藤香織

そのうえで、県内公立学校で「包括的性教育」が推進されるよう、どのような取組を行っていくのか、教育長にお聞きします。

 

▶教育長

「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づく包括的性教育は、現行の学習指導要領が示す、思春期の心と体の発育と発達、受精、妊娠とそれに伴う健康課題、性感染症とその予防、異性の尊重、性情報への適切な対処や
行動の選択などの内容も含まれているが、一方で、指導すべき校種や学年の考え方が異なっています。

学校における性に関する指導は、集団指導と個別指導を両輪として行うものであり、集団指導においては、学習指導要領に基づき発達段階に応じて一律に指導すべき内容を学習しています。

また、子どもたちを取り巻く性に関する問題が深刻化・多様化しているため、個別指導において、学級担任や養護教諭等が、個々の状況や課題に応じて必要な指導を行っています。

 

中学校の学習指導要領における性に関する指導の「はどめ規定」について

▶後藤香織

最後に、中学校の保健体育の学習指導要領において、性に関する指導に関していまだ「はどめ規定」が存在しているのはなぜか伺います。

そのうえで、次期学習指導要領の改訂に向け、内容の議論が進む中「はどめ規定」を撤廃すべきではないかと考えますが、教育長の見解をお聞きします。

 

▶教育長

いわゆる「はどめ規定」については、文部科学省において、「すべての子供に共通に指導するべき事項ではないという趣旨である」との見解が示されており、行き過ぎた指導を防ぎ、発達段階に応じて適切に学習を進めるため、
集団で一律に指導する内容を規定したものであると認識しています。

学習指導要領は、全国どこの学校でも一定の水準で教育が受けられるよう、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程を編成する際の国の基準として示されたものでありますが、時代の変化や社会のニーズ、子供の実態に応じて改訂されるものであるため、いわゆる「はどめ規定」の今後の取扱いについては、国の中央教育審議会等での議論を注視してまいります。

 

要望

▶後藤香織

知事に、要望をさせていただきます。

「赤ちゃんポスト」の取組については、意義はあるものの、課題が多いとのご答弁をいただきました。

しかしながら、妊娠・出産のリスクや責任が女性に大きく偏る中、どうすることもできず、赤ちゃんに手をかけてしまう、遺棄してしまう状況に追い込まれる女性がいることは事実です。

知事には、そういった女性が追い込まれないようなしくみづくりを更に充実していただくようお願いいたします。

また、慈恵病院が「赤ちゃんポスト」を始める際には、国や自治体の理解が得られず大変であったとお聞きしました。

最後の手段ともいえる「赤ちゃんポスト」の実施に取り組みたい県内事業者に対しては、ぜひ、理解・協力をしていただきたく、お願い申し上げ、私の一般質問を終わります。

ご清聴ありがとうございました。

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