2024年12月定例会における私の代表質問、「いじめ問題の私立学校における対応について」の内容です。
2024.12.6
Contents-目次-
私立学校におけるいじめ重大事態が急増した原因といじめ対応・教育支援班新設による成果について
▶後藤香織
つぎに、いじめ問題の私立学校における対応について、知事に伺います。
2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行されて11年が経過しますが、今年10月文部科学省が公表した調査によると、いじめの認知件数および「重大事態」が、いずれも過去最多となりました。
「重大事態」とは、同法律において、いじめにより生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある場合、もしくは、いじめにより相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき、と定義付けられています。
本県では、この重大事態が急増しており、2023年度以降に発生している案件は、今年8月末時点で、学校が調査を行ったもので、総数は26件、そのうち私立学校では13件発生し、亡くなった事案は1件となっています。
私立学校での重大事態急増を受け、今年4月から私学振興課に「いじめ対応・教育支援班」を新設し、いじめ対応への体制を強化しています。
そこで知事に伺います。
体制を強化した中、私立学校におけるいじめ重大事態が急増した原因をどのように分析しているのか、また「いじめ対応・教育支援班」の設置後、その取組みによって、どのような成果が出ているのか、具体的にお答えください。
▶知事
重大事態が急増した原因は、昨年、新型コロナウイルスが感染症法上5類に移行し、生徒間の接触が増えたことに加え、今年度、県立高校の校長経験者を起用して新設した「いじめ対応・教育支援班」が、私立学校の校長を直接訪問し、重大事態が潜在化しないように、きめ細かな助言・指導を行ったことによるものと考えています。
重大事態については、これまでも各学校に対して、機会あるごとに、いじめ防止対策推進法関係法令に沿って対応するよう要請してきましたが、「いじめ対応・教育支援班」の指導により、法令に基づく手続の重要性について、各学校の認識がさらに高まったものと考えています。
重大事態は、どの学校においても起こりうるものであり、県では、重大事態に該当する事案が潜在化しないよう注意を払い、引き続き、各私立学校に対する指導を強化してまいります。
いじめ重大事態に至る前の県のいじめ対応について
▶後藤香織
さて「いじめ防止対策推進法」では、学校の教職員や相談を受けたものは、いじめを受けたと思われる児童が在籍する学校への通報と、その適切な措置をとることとされています。
また通報をうけた学校は、ただちにいじめの事実確認やその措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告することになっています。
県立学校においては、設置者である県がいじめの発生の段階から状況を把握できるのに対し、私立学校の場合、設置者である学校法人等がいじめ発生を確認し、調査を行い、県が把握できるのは、それが重大事態となった場合以降となっています。
そのため、私立学校におけるいじめを、早期の段階で県が把握することは制度上難しくなっています。
我が会派としては、この制度上に違いによって、私立学校における重大事態へ県の対応が、結果的に後手にならざるを得ないところに課題があると考えています。
そこで2点目に、いじめ重大事態に至る前の早期の段階で、県としても適切な対応が速やかにできるようにすべきだと考えますが、知事の考えをお聞かせください。
▶知事
いじめ防止対策推進法では、いじめが発生したとき、学校は、設置者に報告することとなっており、私立学校は、学校法人に報告する必要があるが、県への報告義務はありません。
県としては、出来るだけ早い段階でいじめを発見するため、児童生徒や保護者からの相談や情報提供に対応する「いじめレスキューセンター」を昨年11月に設置しました。
私立高校についても、このセンターから「いじめ対応・教育支援班」に情報提供があった場合、速やかに校長にその内容を伝えるとともに、事実確認を行い、県に報告するよう指導しています。
さらに、県では、各学校法人の理事長を対象とした私学協会の経営者研修会において、私立学校と学校法人が連携して組織的に、いじめの未然防止や早期発見を徹底するよう要請しており、引き続き、こうした取組を行ってまいります。
私立学校の教員による児童生徒への不適切な指導に対する対策及び教員への対応の仕組みについて
▶後藤香織
次に、教員による不適切な指導等についてお聞きします。
部活動等において、教員からの不適切な指導が要因となり、生徒の自殺など深刻な事態に至った事案が発生しています。
私立学校では基本的に教員の異動がなく、同じ教員が長期間に渡り特定の部活動で指導にあたることも少なくありません。
そのため、不適切な指導が常態化したり、慣習として捉えられ、周囲の目が届きにくいといった状況が考えられます。
不適切指導といった不祥事を起こした場合、公立の教員は地方公務員法に基づく懲戒処分になり、自主退職が運用上認められないのに対し、私学の場合は学校法人が就業規則に基づき処分を決めることになり、自主退職も可能であり、本人の不適切指導が反省されないまま、転職も可能であることから、公立教員よりも、不適切指導が顕在化しにくい現状にあります。
そこで3点目に、私立学校の教員による児童生徒への不適切な指導に対して、どのような対策をしているのか、お答えください。不適切指導を行った私立学校教員へのより厳しい対応が可能な仕組みが必要と考えますが、考えをお聞かせ下さい。
▶知事
私立学校は、それぞれの教育理念に基づき運営され、部活動も独自の方針により指導が行われており、こうした私立学校の自主性は尊重されるべきものと考えます。
しかしながら、教員による不適切な指導によって児童生徒が自殺に追い込まれることはあってはなりません。
私立学校における不適切な指導は、法律上、県に対する報告義務はないが、県では、保護者等から相談があったときには、学校にその内容を伝え、事実関係について調査し、適切な対応を行うよう要請し、継続して状況を確認しているところであります。
それでもなお、さらに不適切な指導が続いている場合、県は教員の処遇について関与する立場にはないが、教員の人事管理を行う学校法人に対しても、適切な対応を要請することとしています。
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