2024年12月定例会における私の代表質問、「ひきこもりの高齢化への対応について」の内容です。
2024.12.6
県内のひきこもりの方の人数について
▶後藤香織
次に、ひきこもりの高齢化への対応について、お聞きします。
1980年代、若者の問題であった「ひきこもり」は長期化して、当事者が中高年に達し、高齢の親が子どもを支える7040問題、8050問題として顕在化しました。
これまで「ひきこもり」は「家庭の問題」と捉えられ、行政による積極的な介入や支援が行われなかったため、抜本的な解決をみないまま長期化しています。
その上、政府が把握しているひきこもり人口はあくまでも推計値であり、実態が掴めていないのが実情です。
こうしたひきこもりの高齢化は、経済的困窮のみならず、介護の必要性が親子とも高まることが予想され、問題の深刻化が懸念されています。
特に、親と子どもの関係が上手くいかなくなり、暴力や無理心中などの事件に繋がってしまう恐れもあります。
先日、福岡市早良区でも40代の子どもが70代の親を殺害する痛ましい事件がありました。
我が会派では、ひきこもり支援の専門家である山口大学大学院医学系研究科の山根俊恵教授を招いて勉強会を開き、ひきこもり家族会の方々とも意見交換しました。
そこでは、ひきこもりの当事者だけでなくご家族も社会的孤立状態に陥ることや、介護や福祉の手助けが必要なのに、親子で支援を拒否されるケースも少なくないとの悲痛な声が上がっていました。
ひきこもり当事者、そのご家族に対し、「9060問題」、「孤立死」とならないよう、早期に発見し、対策することが必要です。
高齢化したひきこもりの方は、親が死亡してしまった際に、生活保護を受給しても、資産管理などができず、生活が破綻する可能性もあり、親子で資産や負債の把握、将来的な経済的見通しなどの、専門家を交えて行いながら、生活支援をしていくことも有効だと考えます。
そこで知事に伺います。
本県にひきこもりの方がどのくらいいるのか、お示し下さい。
▶知事
県では、ひきこもり状態にある方の状況や必要な支援内容などを把握するため、令和3年度に、政令市を除く市町村の協力のもと、民生委員・児童委員が把握している人数を調査したところ、1,188人でありました。
一方、一昨年度に内閣府が実施した調査の推計を基に、本県の人口にあてはめると、政令市を除く市町村では、約2万8,000人と推計されます。
この国の推計は、コロナ禍で大きく行動制限を受けている期間に実施され、「趣味の用事の時だけ外出する」など、広義のひきこもりの定義を一律にあてはめた結果であり、国も、「実際にはひきこもり状態にない方も含まれている可能性がある」としています。
このような理由から、県の実態調査とは異なる結果になったと考えています。
今後の実態調査についてであるが、前回の調査結果を市町村と共有することで、相談窓口の設置や実態調査等を行う市町村が増えてきています。
このため、今後は、市町村において実態調査を実施し、個々のひきこもりの状況やニーズを把握し、支援につなげていけるよう働きかけてまいります。
ひきこもりの方に対する取組について
▶後藤香織
その上で、ひきこもりの方が高齢化する中、県として現在どのような取組を行っているのか、その実績も併せてお示しください。
▶知事
県では、ひきこもり地域支援センターと、2か所のサテライトオフィスにおいて、相談支援を行っているところであります。
昨年度は延べ5,700件の相談を受け、ひきこもりの方やそのご家族の状況に応じた助言等を行っています。
まずは、この相談窓口に相談していただけるよう、県のホームページで広報するとともに、コンビニや公民館へのチラシの配架、民生委員などを通じて相談窓口の周知に努めているところであります。
また、市町村に対し、ひきこもりに係る相談窓口の設置や、支援の充実を促しているところであります。
センターでは、金銭面や住まいなど、生活上の相談があった場合は、市町村や自立相談支援機関、社会福祉協議会などの支援機関につなぎ、連携して支援を行っています。
また、来所できない方には家庭訪問や、支援機関に行くことをためらう方には同行訪問といったアウトリーチ支援も行っています。
さらに、本人や家族を対象に、専門家による親亡き後に備えた生活設計等に関する講演会を実施しています。
ひきこもりの方の高齢化が進む中で、引き続き、市町村や支援機関と連携して、ひきこもりの方の支援を行ってまいります。
親亡き後の生活を支援するための取組について
▶後藤香織
そして、ひきこもりの方の親が亡くなった後、その生活を支援していくためにはどのような点に力を入れるべきとお考えでしょうか、知事の見解をお聞かせ下さい。
▶知事
親亡き後は、食事や住まい、金銭管理に関することなど、生活全般について頼る人がいなくなるため、親が亡くなる前から、県や市町村などの支援機関との関係を築いておくことが必要であります。
このため、県としては、高齢のひきこもりの方を抱えている家族に、早い段階から、将来のリスクを理解していただき、ひきこもり地域支援センターや市町村に相談していただけるよう、引き続き、広く相談窓口の周知を図ってまいります。
また、高齢のひきこもりの方が必要とする生活全般にわたるニーズに対応できるよう、市町村や支援機関が参画する「ひきこもり支援者等地域ネットワーク会議」において、様々な支援事例を蓄積することで連携体制を強化してまいります。
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