2024年9月定例会・決算特別委員会における私の質問、「アスベスト対策について」の内容です。
2024.9.27
Contents-目次-
アスベスト事前調査結果資料について
▶後藤香織
民主県政クラブ県議団の後藤香織です。
「アスベスト対策について」お伺いします。
アスベスト(石綿)は、断熱・防音性、耐薬品性 等に優れていることから、以前は、吹付けアスベストやスレート材などの壁材、天井材として使用され、国内でのアスベスト消費のほとんどは建材製品となっていました。
しかし、皆さまもご存じの通り、アスベストによる健康被害が甚大であったことから、その規制は段階的に強化され、2006年には製造や使用が原則禁止となりました。
国土交通省の調査では、民間建築物で280万棟ともいわれているアスベスト含有建材を使用した建築物の解体の時期はやってきています。今後は、大量かつ長期にわたり発生するアスベスト含有建材を、作業従事者の健康被害や環境放出を回避しつつ、適正に解体等工事をし、処理することが必要と考えます。
この観点から、今回は特に、建築物等の解体等工事に伴うアスベスト対策を中心に質問をしてまいります。
建築物等の解体等工事に伴うアスベスト対策については、2021年4月に、大気汚染防止法の改正により、対象建材、作業基準、罰則の対象が拡大されました。
さらに2022年4月からは、一定規模の解体等工事におけるアスベストの事前調査を都道府県知事等に報告することが義務付けられました。
ここで、委員長、あらかじめ「建築物等の解体等工事に伴うアスベスト事前調査の報告件数等について」の資料を執行部に要求しておりますので、委員会配布のお取りはからいをお願いいたします。
〇資料配付
それでは、要求資料のご説明をお願いいたします。
▶環境保全課長
県には、北九州市・福岡市・久留米市・大牟田市以外の地域において実施されたアスベスト事前調査の結果が報告されておりますが、その報告件数は、令和4年度が8,023件、令和5年度が9,817件となっております。
なお、今年度の報告件数は更に増加傾向にあり、8月末時点の報告件数は約4,700件となっております。
次に報告件数の内訳ですが、アスベストが含まれる建材が確認された件数は、令和4年度が3,204件、令和5年度が4,151件となっており、そのほとんどが発じん性、粉じんの飛散性が比較的低いレベル3建材となっております。
次に、大気汚染防止法に基づく解体等工事現場への立入検査件数は、令和4年度が271件、令和5年度が273件となっております。
アスベスト事前調査の結果について
▶後藤香織
報告件数は、増加傾向にあることがわかりました。
今年度は5カ月で約4,700件ということは、このペースでいけば1万1千件を超える計算になります。
ほとんどがレベル3とのことですが、レベル1の吹付アスベストが1956年から1975年ごろまで広く使われていた歴史を踏まえると、レベル1、2の数が本当にこれだけなのか、と疑問も湧いてきます。
また、解体等工事にあたっては、アスベスト事前調査結果報告の他、レベル3の場合は、建築基準法に基づく「建築物除却届」や、建設リサイクル法に基づく工事の届出の提出が必要となります。
レベル1とレベル2では、これに追加して、大気汚染防止法に基づく、特定粉じん排出等作業実施の届出や労働安全衛生法に基づく計画届、作業届の届出がさらに求められ、つまり、レベル3の方が届出の数が少なくて済みます。
また、事前調査方法が不適切であったことにより、アスベスト含有建材を見落とした例も確認されており、レベル3と報告されたものが、実際はより上のレベルである可能性も指摘されています。
そこで、この報告されたアスベスト事前調査の結果に対して、県はどのような確認を行っているのか、その中で、どのような不備が確認されているのか、教えて下さい。
▶環境保全課長
県においては、報告のあったアスベスト事前調査結果の記載に漏れがないか、建築物の構造に応じた建材の事前調査が行われているかなど、報告内容の全てについて確認を行っております。
また、報告内容に不備あるいは不備の疑いがあるものについては、報告者に電話などで内容確認を行っており、その確認件数は令和4年度が約2,200件、令和5年度が約3,700件となっております。
不備の大半は記載漏れとなりますが、資格を有していない者が事前調査を行っていた例も確認されており、このような場合は、事業者に対して、工事に着手せず、資格者による事前調査を改めて実施し、その結果を報告するよう指導を行っております。
行政指導について
▶後藤香織
報告に対し、電話でなどで確認を行い、実際に、無資格者が調査を行った事例もあった、とのことです。
報告に対する確認が非常に重要な役割を果たしていることがわかると思います。
昨年度2023年度には、環境省と都道府県が大気汚染防止法に基づく全国一斉パトロールを行い、全国で立入件数5,592件、その約36%の2,006件に対し、行政指導を行ったとのことです。
その行政指導の内容は、事前調査の結果の報告・掲示の不備に関するものが多く、命令はなかったとのことでした。
そこで、要求資料にもあります通り、県では、年間約270件程度の立入検査を行っているとのことですが、そのうち、行政指導はどの程度行っているのでしょうか。行政指導にはどのようなものがあったのか、悪質な事例についても教えてください。
▶環境保全課長
県では、令和4年度には74件、令和5年度には115件の行政指導を行っております。
その内訳ですが、
①アスベスト事前調査結果が現場に掲示されていない事案が最も多く
②アスベスト事前調査は実施されているが、その結果が報告されていない事案、あるいは
③作業基準に沿った作業が実施されていない事案などについて行政指導を行っております。
また、アスベスト事前調査が実施されていない事案も確認されており、この時は、事業者に対して工事の一時中断を要請するとともに、アスベスト事前調査を実施し、その結果を報告するよう指導を行っております。
アスベスト事前調査報告漏れへの対応について
▶後藤香織
事前調査が行われていない事例もあったということです。
事前調査が行われないまま解体等工事を行うことは、アスベスト飛散の大きな危険性があり、新たな健康被害を生む可能性が高いです。
このように、事前調査結果報告を怠った、または虚偽の報告を行った場合には、30万円以下の罰金が科されます。
このような罰則があるにも関わらず、建築物等の解体等工事の際には、「建築物除却届」や建設リサイクル法に基づく工事の届出は、県の建設部局に、アスベストの事前調査結果報告は、県の環境部局に、と、それぞれ届出・報告先が異なるため、全ての解体等工事において事前調査が行われているのかどうかの確認が難しく、事前調査や報告をしない事例が起こっているのではないかと推測します。
そこで、実際にアスベスト事前調査が実施されていない事例があったとのことですが、それを防ぐために、県はどのような対応を行っているのか、教えて下さい。
▶環境保全課長
建築リサイクル法に基づく届出については、情報管理システムの閲覧権限を環境部も有しておりますので、このシステムを用いて届出状況を適宜確認し、報告漏れがないかをチェックしております。
このほか、保健福祉環境事務所においては、単独あるいは労働基準監督署などと連携して解体等工事現場への立入検査を行っており、事業者におけるアスベスト事前調査の実施状況・報告状況を確認し、必要な指導を行っております。
チェック機能の体制強化について
▶後藤香織
建設リサイクル法に基づく届出についての「情報管理システム」、この閲覧権限を利用して、解体工事の届出に対し、アスベスト事前調査が実施されているか、照らし合わせ、報告の漏れがないかチェックしていることはわかりました。
そこで次は、チェック機能の強化についてお聞きします。
アスベスト使用の可能性がある建築物の解体等工事は、2028年頃の10万棟をピークに全国的に増加することが見込まれています。
その上、2023年10月からは、事前調査で資格者が必要となり、さらに2026年1月からは、工作物についても、資格者による事前調査が必要となります。
事前調査の件数も増加傾向にある中で、今後はさらに届出の受付件数、データ化、確認等の作業も増加することが見込まれ、更なるチェック機能の強化が必要と考えます。
そこで、県では、これまでどのようにチェック機能の体制強化を図ってきたのか、実績をお聞きするとともに、今後どのように更なる強化に取り組むのか、お聞きします。
▶環境保全課長
立入検査体制の強化のため、昨年度、アスベスト含有建材の検査が可能なアスベストアナライザーを1台追加配置し計2台とするとともに、全ての保健福祉環境事務所に簡易検査キットを新たに配備しております。
また、立入検査を担う保健福祉環境事務所の職員を「建築物石綿含有建材調査者」講習会に派遣し、アスベストに関する専門的知識を習得させることで、県職員の監視能力の向上にも努めております。
このほか、アスベスト事前調査結果の報告内容を適切に確認するため、「石綿飛散防止対策指導員」として会計年度任用職員1名を新たに採用しています。
今後は、先進自治体における取組みを研究するとともに、パソコン上のアプリケーションを用いて、報告されたアスベスト事前調査結果の内容不備等を自動抽出し、立入検査が必要な解体等工事現場を効率的に選択するなどデジタル技術の活用も進めることで、より効果的なチェック体制の構築に努めてまいります。
アスベスト対策の周知について
▶後藤香織
今後は、デジタル技術の活用も進め、効率的なチェック体制の構築に努めるとのことでした。
ことし8月には、行橋市の小学校の体育館の天井からレベル1のアスベスト建材が検出されました。
解体時の事前調査により検出されたとのことで、法的に問題がないとはいえ、レベル1の飛散の可能性が高いアスベスト建材が公共施設にあったというのは、県民目線で考えれば、非常に不安に感じています。
そこで、県関係機関や市町村、民間事業者へどのようにアスベスト対策の周知を図っていくのか、お聞かせください。
▶環境保全課長
大気汚染防止法において、解体等工事を行う前にアスベスト事前調査の実施を義務付けられましたので、県関係部局や市町村、民間の事業者においても当該規定を遵守し、解体等工事を行う前にアスベスト事前調査を実施することが不可欠です。
このため、県関係機関や市町村に対して、大気汚染防止法の規定に関する説明会を毎年度開催し、大気汚染防止法の規定を遵守してアスベスト事前調査を実施するよう求めております。
また、民間の事業者に対しても、同様の説明会を毎年度開催するほか、希望のあった事業者に講師を派遣するなど、大気汚染防止法の規定を遵守するよう求めております。
「総合的な相談窓口」の設置について
▶後藤香織
しっかり周知をよろしくお願いします。
アスベスト対策については、私も建設労働者の方から様々な課題をお聞きしました。
今回の建築物等の解体等工事の問題をはじめ、その後のアスベスト建材の廃棄の問題、健康被害、労働問題など、さまざまな分野にわたるため、相談をどこにしてよいかわからない、といった声もあるようです。
そこで、アスベスト対策について全般的に対応できる「総合的な相談窓口」の設置が必要と考えますが、どうお考えか、お聞かせください。
▶環境保全課長
アスベスト対策に関する問題は、健康問題や労働問題、建築物等の解体等工事、廃棄物の処理など非常に多岐に亘ります。
このため、県においては、県民の皆様からのアスベスト問題に関する問合せ等に総合的に対応できるよう、環境保全課が中心となり、県ホームページに、アスベスト問題に関する相談窓口を一括して掲載するなどしております。
引き続き、関係各課とも連携して、県ホームページの掲載情報を充実させるなど、アスベスト対策に関する周知を図ってまいります。
アスベスト対策の更なる推進について
▶後藤香織
環境保全課が中心となって、総合的に対応するとのことで、窓口を周知していただき、今後もしっかりと対応をお願いします。
今回、建築物等の解体等工事に伴うアスベスト対策を中心にお聞きしてまいりましたが、
最後に、アスベスト対策の更なる推進について、部長の決意をお聞かせください。
▶環境保全部長
大気汚染防止法が改正され、建築物等の解体等工事におけるアスベストの規制が強化されました。
アスベストによる新たな健康被害者を生じさせないためには、事業者に大気汚染防止法の規定を遵守いただくことが不可欠であります。
このため、環境保全課長が先ほど答弁したとおり、報告されたアスベスト事前調査の全てについて内容確認を行い、報告内容の不備等については報告者に電話等での問合せを行うなど、法の規定の遵守を促してきました。
また、立入検査の強化のため、昨年度、アスベストアナライザーの追加配置や簡易検査キットの新たな配備に加え、立入検査に従事する保健福祉環境事務所職員に必要な知識を習得させるなど、監視能力の向上にも取り組んできました。
今後は、先進自治体の取組みを研究するとともに、デジタル技術を活用するなどして、報告されたアスベスト事前調査結果を効率的にチェックする体制の構築に努めてまいります。
また、実際の立入検査においてどのような指導が行われているか、
どのような箇所でアスベストの見落としが多いか、
アスベスト事前調査結果が報告されていない事例をどのように探知しているかなど、
先進自治体の事例も含めて継続的に検証し、その検証結果を検査方法に速やかに反映させることで、より効果的な立入検査を実施してまいります。
その上で、立入検査の実施状況に応じて、適切な立入に必要な対応を検討するなど、アスベスト対策にしっかりと取り組んでまいります。
要望
▶後藤香織
今後、現状について検証し、適切な立入に必要な対応を検討する、とのことでした。
現状、現場では、膨大な業務量に追われていることは環境部が一番わかっていると思います。
ぜひ早期に検討し、人員や資材の強化を行っていただくことを要望します。
併せて、他県でも行われている「連絡会議」なども開催し、アスベスト対策の一層の強化を要望して、質問を終わります。
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