2021年2月定例会では、予算特別委員会で質問をさせていただきました。
2021.3.17「宇宙ビジネスの振興について」
▶後藤香織
民主県政クラブ県議団 早良区選出の後藤香織です。
宇宙ビジネスには、宇宙利用分野、ロケットや衛星を製造する宇宙製造・インフラ分野、月面探査などの宇宙探査分野などがあります。
宇宙ビジネスといえば、夢物語のように聞こえるかもしれませんが、天気予報などの地球観測、インターネットなどの通信サービス、GPSなどの測位サービス等、今や私たちの生活には「宇宙利用」が欠かせないものとなっています。
宇宙探査の分野でいえば、人類の生活領域を広げる計画も進んでいます。
NASAは2028年までに月面基地の建設を開始する「アルテミス計画」をたてており、2050年には月面に100名が住んでいるだろうとも言われています。
また、先月2月18日には、火星へ探査車が着陸し、過去に生命体が存在したか、火星で酸素をつくるテストなどのミッションを行う予定です。
日本においても、自衛隊の宇宙作戦隊の創設やJAXAが13年ぶりに宇宙飛行士を募集するなど、関心と注目が集まっています。
そこで今回は、本県における宇宙ビジネスの振興について、お聞きします。
来年度予算案を見ても宇宙ビジネスの振興が大きく取り上げられています。
なぜ、福岡県は宇宙分野へのビジネス展開を支援することとしたのでしょうか。
そこでまず、はじめに、宇宙ビジネスの市場規模と今後の成長見込みについて、ご説明をお願いします。
▶新産業振興課
世界の宇宙ビジネスの市場規模は、民間の調査会社の試算によると、約46兆円であり、20年後には100兆円を超えると見込まれています。
また、国の「宇宙基本計画」の中では、現在1.2兆円の国内市場を2030年代早期に倍増させることを打ち出しています。
このように、宇宙ビジネス市場は、大きな成長が期待されています。
▶後藤香織
では、これまで県では、宇宙ビジネスの振興として、どのような取組をしてきたのでしょうか。
▶新産業振興課
県では、これまで、産学官連携組織「福岡県ロボット・システム産業振興会議」や「福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議」などでの活動を通じて、県内ものづくり企業やITベンチャーの研究開発を支援してきました。
こうした結果、宇宙ビジネスに参入するポテンシャルのあるハード、ソフト企業が誕生しています。
さらに、今年度から、本格的に宇宙ビジネスの振興を開始し、注目の宇宙ベンチャーを招へいし、最新情報を発信する「福岡県宇宙ビジネスフォーラム」の開催や、産学官による「福岡県宇宙ビジネス研究会」の発足等に取り組んでいます。
昨年9月には、本県ならではの強みが評価され、国の「宇宙ビジネス創出推進自治体」に、九州で初めて選定されたところです。
▶後藤香織
今年度から本格的に振興をしてきたとのことですが、2019年12月には、九大発のベンチャー企業QPS研究所の超小型レーダー衛星「イザナギ」が打ち上げられ、私も県庁ロビーでのパブリックビューイングに参加させていただき、大変感動しました。
このQPS研究所に対しては、県ではどのような支援を行ってきたのでしょうか。
▶新産業振興課
QPS研究所の人工衛星制御システムは、福岡県が国の支援を得て開発したプログラミング言語「軽量Ruby」で開発を行っています。
県では、Rubyを活用した先導的な取組みへの開発補助を行っており、QPS研究所に対しては、平成26年度に支援を行いました。
同社では、「軽量Ruby」を採用した結果、開発期間の大幅短縮に成功したと聞いています。
なお、QPS研究所は、この人工衛星制御システムにより、平成30年度「福岡Ruby大賞」も獲得しています。
▶後藤香織
では、QPSのプロジェクトの概要について改めて説明願います。
▶新産業振興課
QPS研究所の超小型レーダー衛星は、光学衛星と呼ばれるカメラで観測する衛星と異なり、夜間や悪天候でも観測可能なことが最大の特徴であります。
加えて、地上1メートル四方の物体を見分けることができる、世界最高水準の性能を誇ります。
こうした超小型レーダー衛星を、令和7年(2025年)までに合計36機打ち上げる計画であり、これが実現すれば、世界のどこでも10分毎に観測することが可能となります。
なお、この衛星本体の製作には、県内のものづくり企業17社が参加しています。
▶後藤香織
昼夜や天候を問わず、高水準の画像を10分おきに取得する、このプロジェクトを、県内の17社のものづくり企業が支えているということですね。
それでは、そのプロジェクトの進捗状況についてお聞きします。
▶新産業振興課
QPS研究所では、令和元年12月、初号機「イザナギ」の打ち上げに成功しました。
「イザナギ」では、宇宙空間における各種機器の作動など、開発目標の95%を実現したものの、画像取得のみが課題として残されていました。
その後、「イザナギ」の課題を改善するとともに、さらに高性能化した2号機「イザナミ」を開発し、今年1月、打ち上げに成功しています。
今月3日には、衛星データからの画像取得に成功したところです。
▶後藤香織
画像の取得に成功したとのことでしたが、QPSの超小型レーダー衛星は今後どのように活用される見込みでしょうか。
▶新産業振興課
QPS研究所のレーダー衛星は、昼夜を問わず悪天候でも観測可能なことから、災害時の被災地の状況確認や、10分おきに観測可能なことから、道路や行楽地の混雑状況のリアルタイム把握、地表の変化をミリ単位で観測可能なことから、社会インフラの管理などへの活用が期待されています。
▶後藤香織
データ活用には様々な可能性があるということだと思います。
こういった宇宙ビジネスは、県内のものづくり企業やIT企業の新たなビジネスチャンスになると考えますが、実際に、どのような業種にチャンスがあるのでしょうか。
▶新産業振興課
QPS研究所の衛星製作には、精密加工が得意な企業、金属材料の取り扱いに長けた企業、機械設計に精通した企業などが参加しています。
本県には、自動車や半導体など優れた技術を持つ企業が集積しており、幅広い企業にチャンスがあると考えています。
また、衛星データを活用する「データ利用ビジネス」の拡大も期待されます。
これまでにない新サービスを提供するアプリ、データの分析を担当するAI、安全にデータをやりとりするためのセキュリティ技術などが必要とされると考えられ、本県に集積するITベンチャーにとっても、幅広い分野でチャンスがあると考えています。
▶後藤香織
幅広い分野でチャンスがあるとのことで、参入を検討する企業もでてくるとおもうのですが、県内ものづくり企業が宇宙ビジネスへ参入するにあたっての課題と対策についてどう認識しているのでしょうか。
▶新産業振興課
企業の皆様からは、「宇宙ビジネスにぜひ挑戦したい」「自社の技術が宇宙ビジネスに活かせるのか知りたい」といった声が寄せられ、コスト面と情報不足が課題だと認識しています。
このため、来年度からは、中小企業を対象とした研究開発助成を新設するほか、「福岡県宇宙ビジネスフォーラム」や「宇宙ビジネス研究会」を通じた、先行事例の情報発信などに取り組み、県内中小企業の皆様の挑戦を後押ししてまいります。
▶後藤香織
挑戦の後押しをよろしくお願いいたします。
その上で、冒頭でもお話がありましたが、本県は昨年9月に、国の宇宙ビジネス推進自治体に選定されました。
これにより、国からどんな支援が受けられるのでしょうか?またそれを利用して、県では今後どのようなことに取り組むのでしょうか。
▶新産業振興課
宇宙ビジネス創出推進自治体選定の選定により「国・JAXAとの連携イベントの開催」「宇宙ビジネス専門家派遣による各種助言」などの支援が受けられます。
JAXAは、衛星の運用・データ利用に関する豊富なノウハウ・知見を持つ、日本の宇宙開発をけん引している研究機関であります。
このため、JAXAとも連携し、衛星データビジネス創出に向けた「アイディアソン」(「アイディア」と「マラソン」を組み合わせた造語であり、新しいアイディアを生み出すためのイベント)も共同で開催したいと考えています。
▶後藤香織
これまで県の支援の下で生まれた県内のものづくり企業やITベンチャーなど、ポテンシャルの高い企業が多く存在するという本県最大のメリットを活かして、本県発の宇宙ビジネスの創出に大変期待をしているところです。
そこで最後に、本県発の宇宙ビジネス創出に向けて商工部長の決意をお聞きします。
▶商工部長
しっかり取り組んでまいります。
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