2021年2月定例会では、予算特別委員会で質問をさせていただきました。
2021.3.16「待機児童対策および保育士の処遇改善について」
▶後藤香織
民主県政クラブ県議団早良区選出の後藤香織です。待機児童対策と保育士確保のための処遇改善について伺います。
はじめに、委員長、あらかじめ、県内の保育士の数や保育士養成施設の卒業者数等の経年推移がわかる資料を執行部に要求しておりますので、委員会配布のお取りはからいをお願いいたします。
※資料配付
執行部からの資料説明は割愛させていただきますが、見ておわかりになるように、1の保育士数等の推移では、下段の保育士の4年間の新規登録者数の累計は10,225人である一方、保育所等で働く保育士・保育教諭は5か年で2,914人の増であり、約7,000人の差が生じています。
直近では、R元年では2,465人登録者が増えているのに対し、H31年からR2年の1年間で、従事者は、これは上段の差になりますが、361人しか増えていません。
届出保育施設等に従事する方がいることを踏まえても、多くの保育士登録者が保育士として働いていない、いわゆる「潜在保育士」になっていることがわかるかと思います。
また2の保育士養成施設の卒業者等の5か年推移を見ても分かるように、保育士として働いていない学生が増えている現状です。保育士の労働環境等が十分でないことも、就職しない背景にあると思います。
そこで、これまで県では、保育士確保についてどんな取組をしてきたのか、併せてその実績についてお聞きします。
▶子育て支援課
県では、これまで①新規保育士の確保、②離職の防止、➂潜在保育士の復帰促進、という3つの柱で、保育士確保に取り組んできました。
まず、①新規保育士の確保については、保育士養成校の学生を対象に、5年間保育士として就業すれば全額免除される修学資金の貸付を行っており、令和元年度実績で565人の方にご利用いただいています。
また②離職防止については、保育士が働き続けられる職場環境づくりを目指して、経営者を対象にしたセミナーやコンサルティングを実施するとともに、今年度、県内保育所に対し、保育士の負担軽減につながるICT化導入等の国補助金について活用意向を調査し、その結果を踏まえて、市町村や保育所に対し活用を働きかけており、来年度、22市町村107施設での導入が予定されています。
➂潜在保育士の復帰促進については、平成25年度から福岡県保育士就職支援センターを設置し、潜在保育士の再就職を支援してきました。
31年1月には、センターの機能を強化するため、マッチングサイト「ほいく福岡」を開設し、今年度は最新の保育知識や処遇改善の状況をわかりやすく伝えるリーフレットや動画を作成し、復帰支援の強化を図っています。センターの就職支援により、令和元年度は77名、2年度は2月末で58名が就職されています。
▶後藤香織
今ご説明いただいた通り、3つの柱で取組はしているとのことですが、それでも待機児童は、2020年4月1日時点での待機児童数は、1,189人でワースト4位であることから、まだまだ対策が必要であると思います。
そこで、次年度予算では、待機児童対策としてどんなことに取り組むのかお聞きします。
▶子育て支援課
県では、来年度、まず待機児童の実態等を把握する調査を行い、待機児童率の高い市町村にアドバイザーを派遣し、待機児童解消のためのプラン策定を支援します。
併せて、これらの市町村において小規模保育等の多様な保育の受け皿整備を行う事業者への補助や、市町村独自の保育士確保策に対する補助を行うこととしています。
また、保育人材の確保を図るため、福岡県保育士就職支援センターを再編して「保育士・保育所支援センター(仮称)」とし、「保育資格保有者届出制度」の創設や「保育人材の専門相談窓口」の設置により、就労中の保育士や離職した潜在保育士を早い段階から支援する仕組みを構築してまいります。
加えて、県と市町村で構成する待機児童等対策協議会において、保育士養成校や県保育協会をメンバーとする部会を立ち上げ、新規保育士確保に向けた対策について協議を行う予定であります。
▶後藤香織
これまでの取組に加え、待機児童ゼロにむけてしっかりとお願いいたします。
次に保育士の処遇改善についてお聞きします。待機児童対策には、保育士の確保と質の維持が不可欠として、2015年、保育士の処遇改善等加算制度がスタートしました。
この制度の概要とその意義についてお聞きします。
▶子育て支援課
処遇改善等加算は、 保育所等の全職員を対象として人件費の加算を行う処遇改善等加算Ⅰと、 技能・経験に応じて副主任等の役職に任命された職員への手当等として月額で最大4万円を加算する処遇改善等加算Ⅱにより、保育所等への給付費の加算を行う制度であります。県所管の保育所等については、施設が市町村を通じて申請を行い、県が認定を行っています。
この制度は、保育士の給与水準の底上げとキャリアアップの仕組みを構築することを目的とした制度であり、保育士の確保を図り、質の高い保育を安定的に供給していくためには、重要なものと考えています。
▶後藤香織
今ご説明があったように、この加算認定は、都道府県が行うこととなっているが、本県での認定実績はどうなっているのでしょうか。
▶子育て支援課
令和元年度、処遇改善等加算の適用対象となる県所管の保育所等は513施設あり、そのうち処遇改善等加算Ⅰの認定を行ったのは、512施設でほぼ100%、処遇改善等加算Ⅱの認定を行ったのは478施設で約93.2%となっています。
▶後藤香織
認定を受けていない施設がありますが、そうなると、この園の保育士は処遇加算がなされていないことになると思います。
加算認定をうけていない園はどういった理由で受けていないのか、またこれらの園に対して県はどう対応するのかお聞きします。
▶子育て支援課
令和元年度、加算Ⅰ又は加算Ⅱの認定を受けなかった県所管の保育所等は35施設あり、その主な理由としては、役職や賃金体系を定めた就業規則等の整備や具体的な研修計画の策定などの事務処理が煩雑であることや、加算の要件となる予定のキャリアアップ研修について、職員の人員体制上、受講がスムーズに進まない、といった理由が挙げられます。
県としては、処遇改善等加算が保育士確保を図る上で重要な制度であることを踏まえ、これらの施設や市町村に対し、制度の内容について、丁寧な説明や周知を図るとともに、来年度から県で実施するオンラインでのキャリアアップ研修の受講を促すことで、認定申請を行っていただくよう働きかけてまいります。
▶後藤香織
制度を活用し、処遇改善につながる働きかけをお願いいたします。
この処遇改善等加算制度については、2019年12月に会計検査院が、処遇改善のための国からの交付金のうち、全国でおよそ7億円が賃金の上乗せに使われていないという実態を明らかにしました。
内閣府の、保育所運営に係る給付費(公定価格)の年額の人件費相当分を見てみると、例えば、福岡市、春日市、福津市を含む10/100地域では、処遇改善加算が全くつかなくても約407万円となっています。
一方で2019年度の「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」によると、同地域での常勤保育士の年間賃金は約380万円となっており、公定価格から算出した年間賃金と実態の年間賃金とでは、およそ27万円の差が生じています。
この差額を鑑みても、処遇改善のための交付金が、賃金の上乗せに使われていないとしたら、大きな問題であると思いますが、本県ではどのような状況なのかお聞きします。あわせてこのような事例があった場合の対応についてもお聞きします。
▶子育て支援課
内閣府は、会計検査院からの指摘を踏まえ、処遇改善等加算分について職員の賃金に充てることができず残額が生じた場合は、翌年度までに賃金改善に充てる取り扱いについて再度徹底を通知し、合わせて、今年度の保育所等からの加算申請において、前年度加算の残額がある場合、今年度の賃金への配分計画を記載するよう様式を変更しました。
これを受け、令和元年度の処遇改善等加算の適用対象513施設に確認したところ、68施設で前年度加算の残額があり、これを今年度の賃金に配分する計画としています。
県としては、これらの施設に対し、確実に職員の賃金対策に充てるよう指導するとともに、実績報告を審査する市町村に対しても、支払いが完了したことを確実に確認するよう求めてまいります。
▶後藤香織
513施設のうち、68施設は前年度、加算の残額があるということです。今年度から様式が変わったとのことですので、きちんと賃金に充てられたかどうか、引き続き確認をしていきたいと思います。
次に、2020年12月21日に国は「新子育て安心プラン」の概要を発表しました。
それによると令和3年度から6年度末までの4年間で約14万人の保育の受け皿を整備するとしています。
そこには、短時間保育士の活躍推進として待機児童が存在する市町村において各クラスで常勤保育士一名必須との規制をなくし、それに代えて2名の短時間保育士で可とする、との規制緩和がされる見込みです。
この短時間保育士とは、主に1日6時間未満または月20日未満勤務する保育士です。
私はこの規制緩和は、保育士の処遇改善を後退させ、保育士という職業自体の価値を下げるものと考えます。
また、私たち保育園に子どもを預ける保護者としてもこのことによる保育の質の低下を懸念しています。
そこで、県では、このことをどう捉え、対応するのかお聞きします。その上で、保育士の確保、処遇改善を推進する県として、制度の改善を国に要望していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
▶子育て支援課
今回の変更は、国の基準上、常勤保育士が原則という考え方を前提としつつ、厚生労働省の通知により、待機児童発生市町村に限って、常勤の保育士が確保できず、やむを得ないと市町村で判断する場合に、各クラス1名の常勤保育士に変えて2名の短時間保育士を充てることを認めたものであります。
県としては、今回の取り扱いが、保育の質の低下につながることがないよう、市町村に対して適切な判断をお願いするとともに、制度改善にかかる保育現場からの要望について、県保育協会等にも確認し、国への要望等の対応を検討してまいります。
▶後藤香織
原則は常勤保育士であり、やむを得ない場合の際の対応だとのことですので、その周知をしっかりとしていただき、保育の質の低下につながらないよう、よろしくお願いいたします。
最後に、本県における今後の保育士確保、処遇改善への決意を部長にお伺いします。
▶子育て支援課
保育士の確保は、保育の受け皿を確保し待機児童を解消するため、また、質の高い保育を安定的に供給していくために、重要な課題であります。
県としては、現行の保育士の処遇改善制度を、市町村と連携し着実に実施するとともに、保育士の賃金が依然として全産業平均の賃金と比べ低いことから、さらなる処遇改善について引き続き国に要望してまいります。
また、新規保育士確保に取り組む市町村と養成校との連携、保育士が長く働き続けられる職場環境の構築、潜在保育士の円滑な職場復帰の支援、といった取り組みを強化していくことで、さらなる保育士の確保を進めてまいります。
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