2023年9月定例会・決算特別委員会における私の質問、「看護職員の確保対策と処遇改善について」の内容です。
2023.9.29
Contents-目次-
福岡県の就業看護職員数等について
▶後藤香織
民主県政クラブ県議団 早良区選出の後藤香織です。
看護職員の確保対策と処遇改善についてお伺いします。
2019年、厚生労働省「看護職員需給分科会」の中間とりまとめにおいて、2025年の看護職員の需給推計を発表しました。
それによると、ワークライフバランスの充実を前提に、労働環境の変化に対応して3通りのシナリオを設けた場合、都道府県の報告した需要よりも多い、2025年に188万~202万人の需要となり、現状のままでは最大で27万人が不足すると推計しました。
本県は、5,771人から12,597人が不足する見込みとなっています。
2025年は団塊の世代が全員75歳以上となり、訪問看護のニーズが高まるなど、医療従事者の需要はさらに高まると思われます。そこで、看護職員の確保対策とそのために必要な処遇改善ついて、質問をいたします。
ここで、委員長、あらかじめ「福岡県の就業看護職員数等について」の資料を執行部に要求しておりますので、委員会配布のお取りはからいをお願いいたします。
また、配布資料のご説明を簡単にお願いいたします。
(資料配布)
福岡県の就業看護職員数等について
▶医師・看護職員確保対策室長
本県の就業看護職員数等についてでございます。
まず、「1 就業看護職員数」についてです。
令和2年の職員数の合計は約8万4,000人となっており、平成24年と比べて約1万人増加しております。
次に、「2 看護師等免許新規申請者数」についてです。
平成30年度から令和4年度の各年度で見ますと、合計では、3,000人台~5,000人台と年度間のばらつきがございます。
「3 看護師等学校養成所の卒業生就業状況」についてです。
平成29年度から令和3年度の各年度で見ますと、毎年度約2,600人が看護職員として、県内に就業しています。
最後に、「4 ナースセンターへの離職届出数等」についてです。
平成30年度から令和4年度の各年度で見ますと、看護師等の免許を持ちながら、職に就いていない方はナースセンターへ届け出る必要がございまして、毎年度、新たに1,000人前後となっています。
また、ナースセンターの無料職業紹介等により、令和2年度以降、1,000人以上の方が就職されております。
看護職員の確保対策について
▶後藤香織
今ご説明あったように、資料の1を見ますと、この約10年間で本県で就業する看護職員は増加傾向にあります。
2年ごとに約2,000人増加しており、一概にはいえませんが、同様の傾向で増加したとすると、2025年には8万9000人弱となります。
国の試算では、約92,000人~99,000人必要ですので、看護職員が不足します。
つまり、就業する看護職員は増えてはいるものの、需要ニーズの高まりに追い付いていない状況といえます。
そこで、看護職員の確保は重要と考えますが、本県では看護職員の確保対策について、どのように取り組んできたのか、お聞かせ下さい。
▶医師・看護職員確保対策室長
県では、令和元年に看護職員の確保及び質の向上等を図るための具体的施策を協議するため、「福岡県看護職員確保対策協議会」を設置しております。
当協議会でのご意見を踏まえ、看護職員の養成、離職防止、復職支援の3つを柱として看護職員の確保に取り組んでいるところでございます。
看護職員の離職率について
▶後藤香織
大きく「看護職員の養成」「離職防止」「復職支援」の3つの柱で取組を進めているとのことです。
「看護職員の養成」については、資料の2.3にもありますように、新規免許取得者数は、看護師以外は減少傾向にあり、特に准看護師の減少が大きいです。
養成施設の入学者数・卒業者数は微減とも言えますが、ほぼ横ばいにあります。
そもそもこれら看護職員の免許は国家資格ですから、免許を持つ方がいなければ、その職に就くことができませんので、看護職員を希望する方が増えるように、看護職の魅力を伝えたり、労働条件などの処遇の改善が必要になってくると思います。
そういった待遇面の良し悪しは離職率で判断されることも多いです。
そこで、本県の正規雇用全体と新卒採用者の看護職員の離職率とその特徴はどうなっているのでしょうか、教えてください。
▶医師・看護職員確保対策室長
令和3年度の看護職員のうち、正規雇用全体の離職率は、11.3%で、全国は11.6%となっております。
新卒採用者の離職率は10.4%で、全国は10.3%となっております。
新卒採用者の離職率は、全国と同様に正規雇用全体の離職率より低くなっていますが、近年増加傾向になっております。
離職防止のための取組について
▶後藤香織
離職率は11.3%とのことですが、これは厚生労働省の産業別離職率で比較すると離職率が高い部類にあたります。
そこで、本県の離職の状況を踏まえても、離職防止のための取組は重要であると考えますが、実績を含めた現在の状況と今後の取組についてお聞かせください。
▶医師・看護職員確保対策室長
県では、看護職員の離職防止を図るため、医療機関が行う新人看護職員に対する研修や病院内の保育所の運営に係る経費への補助などを行っています。
昨年度は、新人看護職員研修について112か所、院内保育所については、51か所の医療機関に補助しております。
引き続き、より多くの医療機関が補助金を活用できるよう努め、看護職員が働き続けられるよう離職防止に取り組んでまいります。
▶後藤香織
ひきつづき、しっかり取組をお願いします。
ナースセンターの機能強化について
▶後藤香織
復職支援についても聞かせてください。
現在、離職した、または就労していない免許保持者の方は、県ナースセンターに届出することとなっています。
全国に50万人以上いるとされる潜在看護職員を復職に繋ぐための制度であるものの、免許保持者の全体把握ができていないことや、努力義務であり届出を行っていない者が多数いる可能性が指摘されています。
本県の離職届出の現状については、配布資料の4にある通りで、本県では、近年、単年度でみれば、離職届出数を上回る復職者数となっていて、復職支援の実績を積み重ねていることから、現行の制度においては、より多くナースセンターへの離職届出を促し、復職支援につなげるなど、ナースセンターの機能強化が重要だと考えます。
そこで、ナースセンターへの届出を促進するためにどのように取り組んでいるのか、また、ナースセンターにおいて、どのように復職支援に取り組んでいるのか教えてください。
▶医師・看護職員確保対策室長
ナースセンターでは、離職の届出を促進するため、届出制度について、医療機関等への案内チラシの送付や訪問時における説明などにより周知を図るとともに、ナースセンターが実施する復職研修の受講要件に離職の届出を必須にしております。
また、ナースセンター本所及び県内4か所のサテライトにおける無料職業紹介などの復職支援に加え、ハローワークと連携して、ハローワークに出向いての出張相談、看護職員に関する求人・求職情報の共有など復職支援を実施しております。
▶後藤香織
今後もしっかり取組を進めていただき、看護職員の復職支援をお願いいたします。
「診療報酬による処遇改善制度」について
▶後藤香織
次に、看護職員の処遇改善について伺います。
現在、日本は円安が進行し、日本看護協会の「2022年病院看護実態調査報告書」によると、日本の看護師の初任給は約230万円から300万円程度ですが、カナダでは約700万円程度ということです。
また、仕事の考え方も日本では自分を犠牲に看護をするのが当たり前だけれども、海外では、残業もなく、休憩もとれ、看護師の担う業務も明確であり、働きやすいという声を聞きました。若い方が海外で出稼ぎに行きたいという事例も増えているとも聞いています。
日本の看護職員の給与を上げていかなければ、不足している看護職員の確保にはつながらないと考えます。
現在、さまざまな看護職員のための処遇改善がありますが、その中から、特に「診療報酬による処遇改善制度」についてお聞きしていきます。
まず、この制度の概要についてご説明願います。
▶医師・看護職員確保対策室長
この制度は、現場で働く方々の収入を引き上げるため、昨年10月から、まずは地域で救命救急センターなど一定の役割を担う医療機関の看護職員を対象に、収入を3%程度、月額で平均1万2,000円相当引き上げるための措置として、診療報酬において看護職員処遇改善評価料が新設されたものです。
「診療報酬による処遇改善制度」の問題点について
▶後藤香織
この看護職員の処遇改善については、診療報酬に加算、つまり利用者が負担しているとのことです。
この制度については、元々、コロナ禍に国の経済対策から始まった国庫補助事業を診療報酬に移行したものであり、その費用は国が負担すべきであるとの意見や、対象が一部の医療機関に勤務するものだけとなっており、同じ業務をおこなってるのに不公平であるとの声もお聞きしました。
このことについて、室長はどうお考えか教えてください。
▶医師・看護職員確保対策室長
先程申し上げた処遇改善は、看護師の賃金水準が全産業平均を上回っていることや利用者の窓口負担などの影響も踏まえ、仕事の内容に応じた措置となるよう一定の役割を担う医療機関を対象としており、また、安定的な財源確保の観点からも合理的であると考えております。
現在、国が設置した「公的価格評価検討委員会」において、国民の保険料や税金が効率的に使用され、それが現場で働く方々に広く行き渡るようになっているか等の費用の見える化を行った上で、仕事の内容に応じた更なる処遇改善に取り組むこととしています。
▶後藤香織
国は診療報酬の見える化を行って、更なる処遇改善に取り組むとのことです。
この処遇改善の対象については、これから最も需要が増え、不足すると国が推計している訪問看護の分野は該当となっていません。
この確保が必要な訪問看護の分野においては特に、早急に処遇改善がなされるべきではないかと思います。
ぜひ県からも国に働きかけをお願いします。
「診療報酬による処遇改善制度」の適切な評価について
▶後藤香織
看護職員の処遇改善分は診療報酬として加算されるということで、病院側から看護職員に対し、月額平均12,000円相当のアップが本当になされているのか、また、対象となっている病院側も手続きをしていないことも考えられます。
そこで、病院に支払われた看護職員処遇改善評価料分の診療報酬は、適切に還元されるべきと考えますが、そのためにどのように検証が行われているのでしょうか。
また、対象となる病院で診療報酬加算の手続きを行っていただくため、県としてどのような対応を行ったのでしょうか、お聞かせください。
▶医師・看護職員確保対策室長
看護職員処遇改善評価料を算定した医療機関は、看護職員の処遇改善の状況を記載した「賃金改善実績報告書」を地方厚生局へ毎年提出することとされており、国において、診療報酬による措置が職員の給与にどのように反映されているのか、賃金改善の取組状況を評価することとなっております。
また、県では、看護職員の処遇改善について、国庫補助事業から診療報酬制度への移行が円滑に進むよう、昨年10月の制度開始前に対象医療機関等に対し、制度の概要やその手続き等について周知を行っております。
▶後藤香織
国によって、この処遇改善の分が、職員の給与にどう反映されたか評価するとのことです。
ぜひ、この国の取組が、看護職員の処遇改善につながると思いますので、より多くの看護職員に行き届くことを望みます。
今後の看護職員確保および処遇改善について
▶後藤香織
これまで申し上げてきた通り、2025年の看護職員不足に対し、その確保と、そのための処遇改善は大変重要です。
最後に、本県における今後の看護職員確保および処遇改善についての部長の決意をお願いします。
▶保健医療介護部長
厚生労働省が令和元年に公表した看護職員の需給推計では、本県において令和7年に必要とされる看護職員数は、少なくとも約9万2,000人と見込まれており、令和2年の看護職員数約8万4,000人との差である約8,000人を確保する必要があります。
このため、看護師を目指す学生への修学資金の貸与などによる看護職員の養成、新人看護職員研修や院内保育所運営費への助成などによる離職防止、無料職業紹介等による復職支援に引き続き取り組み、看護職員の確保を図ってまいります。
また、看護職員の処遇改善については、地域で救命救急センターなど一定の役割を担う医療機関の看護職員のみがその対象となっておりますが、仕事の内容に応じた適切な処遇が行われることが必要であると考えております。
現在、国において更なる処遇改善について議論されています。
国民の理解を得るためにも必要な議論だと考えておりますので、その動向を注視してまいります。
看護職員の確保対策と処遇改善についての質問ありがとうございます。私は看護師(訪問)をしています。
看護師の確保は訪問看護でも課題です。
民間人材紹介会社への病院などから離職後の復職者の流出は多いと感じています。
看護協会などが、病院などへ強力に退職者に県ナースセンターへの届出を実施してもらうようにしてもらいたいです。最近の人材紹介会社への紹介料が約80万円です。
ナースセンターへの登録のしやすさ、その後の紹介内容の豊富さ、復職者への負担のなさなど手厚さと、SNSなどを利用した(活用者の声や、インフルエンサーの活用)ナースセンターの便利さをアピールして欲しいです。
はぶと よしかず 様
現場の貴重なご意見、どうもありがとうございます。
非常に大事な課題であり、引き続き取組んでまいります。
今後もどうぞよろしくお願いいたします。