2022年9月定例会・決算特別委員会における私の質問、「専修学校と各種学校における留学生の現状について」の内容です。
2022.10.12「専修学校と各種学校における留学生の現状について」
▶後藤香織
民主県政クラブ県議団、早良区選出の後藤香織です。
専修学校と各種学校における留学生の現状について伺います。
二〇〇八年、国は留学生三十万人計画を策定し、その達成のため日本語学校の就学ビザを留学ビザに一本化するなど、規制緩和を行いました。
こういった要因もあり、留学生数はコロナ前までは増加の一途をたどっていました。この流れを一部の学校はビジネスチャンスと捉え、安易に留学生を受け入れており、それが一つの要因となり、近年、留学生の大量行方不明事案等も起きています。
こういった状況を問題視し、私は二〇二〇年十二月定例会の一般質問で専修学校における留学生の受入れについて質問し、学校への適正な在籍管理などを要望、県も専修学校に在籍する留学生の状況に対して、全ての専修学校において把握をすることとなりました。
国も、日本語教育機関の告示基準の厳格化、二〇二一年度より留学生ビザの在留資格を厳格化するなど、安易な受入れではなく、外国人留学生が日本で学べる環境を整えることに重きを置いた対応を進めています。
そんな中、先月九月七日に福岡市内の日本語学校で鎖や南京錠で留学生を拘束し人権を侵害したとして、出入国在留管理庁は日本語教育機関として認める告示を抹消するという事案が起きました。
この学校は県が認可をした各種学校の十八校のうちの一校でもあります。このニュースは日本語学校の闇とやゆされ、全国でも大きく報道され、世界的にも重大な人権問題として取り上げられました。
そこで今回は、この事案のその後と県の対応を中心にお聞きしていきたいと思います。
まず初めに、県が把握しているこの日本語学校の事案の概要と、この事案についてどう認識されているか、お聞かせください。
▶私学振興課長
本県が各種学校として認可している日本語学校につきまして出入国在留管理庁は、昨年十月二十五日に同校で発生した職員による留学生に対する身体拘束を人権侵害とし、また、学則に記載されていない手数料の徴収や教員変更報告の遅滞などを日本語教育機関の告示基準違反として、先月七日、委員御指摘の抹消処分を行いました。
福岡出入国在留管理局によりますと、この処分により同校は新たな留学生の受入れができなくなり、同校の設置者は、今後五年間、新たな日本語教育機関としての告示を受けることができないとされております。
全国初となるこうした処分がこの福岡県で行われたことについて、重く受け止めております。
今回の処分は、多くの留学生が在校する中で行われており、県としてはまず第一に留学生の不安を取り除くことを考えなければならないと認識しております。
▶後藤香織
全国初の処分ということで、私も大変ショックを受けております。
重く受け止めているとのことですが、では、県はこの事案を受け、どのように対応したのか、同校または学校法人へどういった指導がなされたのかお聞きします。
▶私学振興課長
県では、昨年十月に発生した事案について、今年一月に同校から再発防止策を含めた報告書を提出させるとともに、生徒指導に際し人権に配慮することや、適切な留学生の在籍管理などを徹底することを指導したところでございます。
また、同在留管理局の抹消処分を受け、先月九日、同校の校長──設置者である学校法人の理事長を兼ねておられますが──に対し、処分に至った経緯や留学生の対応など事案のてんまつに関する報告書の提出を求めております。
先月十五日、県では同在留管理局と協議し、同校での授業が適正に実施されることを前提に、在校生の転籍等が決定するまでの間、授業を継続しても差し支えないことを確認しております。
その後、県から同校に対して、教育課程を遵守して授業を実施すること、在校生からの転校希望には適切に対応すること、留学生の人権には十分に配慮することを申し入れるとともに、授業の状況や留学生の転校希望などについて毎週ヒアリングを行っているところでございます。
▶後藤香織
報告書の提出や申入れをし、毎週ヒアリングを行っているとのことです。
ここで、在校生への対応についてお聞きしたいと思います。
まずは、課長もおっしゃいましたが、在籍する生徒が不利益を被らないことが何より大切だと考えます。日本語学校の場合、在留資格は留学で、その期間は最長一年三か月となります。
そこで、在校生の在留資格はどうなるのか、お聞きします。
▶私学振興課長
同在留管理局によりますと、在校生の在留資格は直ちに無効とはならず、就学期間中に在留期限を迎える留学生に対しては、在留資格の延長について配慮すると聞いております。
▶後藤香織
在校生の留学の在留資格は大丈夫ということで、安心をいたしました。
この日本語学校は、この事案を受け日本語教育機関としての告示が抹消され、これから五年間、留学生の受入れができず、在校生約六百九十人も出入国在留管理局より転校の指導を受けました。
そこで、在校生のうち転校、退学希望者はどのくらいいるのか、現在の転校、退学の現状と、今後どのような経緯で転校措置が行われるのか御説明ください。
▶私学振興課長
同校では先月十五日に学生サポートセンターを設置しており、昨日までに延べ約二百五十件の相談があったと聞いております。
しかし、まだ転校、退学希望者の数は把握していないとのことでございました。なお、同校によると、昨日現在、転校が決定した留学生はいないとのことでございます。
また、転校の措置につきましては、法令上は規定がございませんが、同校には受入れを希望する学校から問合せがあっておると聞いております。
同校では、転校を希望する留学生と問合せのある学校とのマッチングを検討しているとのことでございました。
▶後藤香織
その場合の転校、在留期間更新等の福岡出入国在留管理局への手続等に関するサポートや学費の返還、転校先の入学金など、県の支援が何かしら必要かと思いますが、どう支援をするおつもりか、お聞かせください。
▶私学振興課長
転校や在留期間更新、学費や入学金の問題など留学生のサポートにつきましては、国際局と連携し、県留学生サポートセンターを核に、弁護士会や行政書士会など支援機関との協力体制を整え、相談に対応してまいりたいと考えております。
あわせて、同在留管理局とも連携を図りながら、留学生の支援にしっかり取り組んでまいります。
▶後藤香織
約六百九十人の転校先を探すのは、受け入れることができる期間も限られていることから大変だと思いますが、県からも申入れをしているとおり、希望者には適切に対応していただきたいと思います。
次に、学校に対する対応についてお聞きします。
留学生の受入れをしている法務省に告示された日本語教育機関は福岡県内に四十六校ありましたが、その中で専修学校の認可を受けている学校は八校、各種学校の認可を受けている学校は八校で、その一つがこの日本語学校です。
ちなみに日本は、専修学校に進学する留学生はほとんどが日本語学校からの進学となっています。
この事案のあった日本語学校は、系列の専修学校を有する準学校法人が運営していることから、学校教育法並びに私立学校法を根拠としています。
所管する県は、学校教育法上では学校の設置認可及び閉鎖命令、私立学校法では業務や財産情報の聴取、立入検査、必要な措置命令、役員の解任勧告、解散命令の権限があります。
つまり、法令違反があった場合に県は、法人への立入検査を行い、必要な措置を取るように命令ができ、従わない場合は学校法人への解散命令も可能だということです。
今回、この日本語学校は重大な人権侵害、法令違反をしたわけであり、私はこの学校を各種学校として認可した県にも責任があるのではないかと考えております。
そこで、各種学校の認可はどういった基準で行われているのか、各種学校としての扱いはどうなるのかお聞きします。
▶私学振興課長
各種学校の認可につきましては、施設の規模や必要な設備、教員の数など、国の各種学校規程及び県の審査基準により審査し、県私立学校審議会の意見を踏まえ認可しております。
各種学校としての扱いでございますが、同校は先月九日に福岡地方裁判所に日本語教育機関としての告示抹消処分の取消訴訟を提起するとともに、当該処分の執行停止の申立てを行っております。
その結果、先月三十日には同裁判所により当該処分の執行停止が決定されたところでございます。
学校教育法では学校の閉鎖命令が、また私立学校法では学校法人の解散命令を知事により行うことができるとされておりますが、県としましては、まず第一に不安定な立場に置かれております留学生のサポートを優先すべきと考えており、当面は留学生の転校や裁判の状況など今後の動きを注視していく必要があると考えております。
▶後藤香織
裁判の状況などを注視していくとのことでしたが、私は人権が軽んじられた今回の決定には正直、驚きました。
裁判の今後の結果も踏まえた上で、組織的な違法行為が認められた場合には、各種学校、学校法人の扱いについて必要な措置をすべきだと考えております。
ところで、日本語教育機関に告示されている場合、その告示基準により授業時間等も細かく定められています。
その上、学校は生徒に対し、学校の授業だけでなく、文化や生活の指導等も必要で、在籍管理等は日本人より対応が難しく、業務も多い状況にあります。
出入国在留管理庁のホームページにもあるように、日本語学校の入学に当たっては、一般的に日本語能力検定N5相当以上のレベルが必要です。
日本語教育期間終了後、大学、専門学校等の高等教育機関へ進学する場合には、日本語で行われる授業を理解するために、N2以上の日本語能力が求められています。
しかし、進学先の一つである専修学校等は入学時にN3レベル相当としているところが多く、出入国在留管理局の示す基準に達していないのも現実です。学校教育目標にきちんと達しているか確認することも、こういった事案を防ぎ、留学生制度を維持するために必要だと考えます。
そこで、特に専修学校、各種学校として県が認可をした日本語教育機関には、きちんと教育目標に達しているかなどの調査も県として行うべきだと考えます。
その上で、こういった項目も踏まえ、留学生を受け入れている全ての専修学校、各種学校において立入検査を行うべきです。見解をお聞きします。
▶私学振興課長
県では、学校教育法及び私立学校法の関係法令及び留学生管理等に関する文部科学省の通知に従い、毎年これらの基準に適合しているか調査しているところでありますが、教育目標の達成度に関しては、同在留管理局が日本語教育機関の告示基準に基づき学校に報告を求めているところでございます。
県と同在留管理局両者で情報の共有を図ってまいりたいと考えております。
立入検査につきましては、私立学校法に規定はありますが、運用に当たっては同法に基づく措置命令や解散命令の対象となり得る事態に立ち至っている場合に限り行うものとされております。
▶後藤香織
この際、私学振興課の所管となる私立の専修学校と各種学校においてこういった事案を二度と起こさないよう、留学生の受入れ、在籍管理について改めてお伺いしたいと思います。
本県の専修学校、各種学校の留学生数及び受入れ学校数については、コロナ前までは増加傾向で、二〇二〇年度は専修学校で受入れ校数六十三校、六千六百四人、各種学校は八校で千七百二十三人、計八千三百三十一人となっていました。
コロナでこの二年間は減少しましたが、今日の水際対策を見ても今後は再び増加するものと推測します。
また、本県では今年度、留学生を対象としていると思われる専修学校が一校、来年度は二校新たに開校予定でもあります。
そんな中で、今回起きた事案はほかの学校でも起こり得る可能性があります。
そこで、専修学校と各種学校において今後、問題事案、法令違反等や受入れに関する非適正校が発生しないよう、県としてどう取り組んでいくのかお聞きします。
▶私学振興課長
同在留管理局では、専修学校及び各種学校における不法残留や在留資格の取消しの発生率などに応じて、留学生の在籍管理が適切に行われていると認められる教育機関を適正校として選定しております。
県では、昨年度から留学生を受け入れている全ての専修学校、各種学校に対し、この選定結果の報告を求め、過去四年間に二回以上、適正校と選定されなかった学校に対し、文部科学省の通知に基づき留学生の受入れが入学定員の二分の一を超えないよう指導を行い、教育指導の充実や適切な在籍管理を求めているところでございます。
また、文部科学省が定める留学生を受け入れる際の留意事項を各学校に周知し、学校が留学生の状況を把握し、在籍管理、生活指導等を適切に行うよう指導を行っているところです。
今後、こうした指導に沿った学校運営が行われているかどうか、毎年実施しております基本情報調査により実態を把握するとともに、同在留管理局とも連携を強化し、問題事案や法令違反等を未然に防止していきたいと考えております。
▶後藤香織
実態把握と福岡出入国在留管理局との連携強化は未然防止に向けて大変重要だと思います。
しっかりとよろしくお願いいたします。
他県の事例、例えば留学生が全国一位の東京都などでは、地方入国管理局と合同での実地調査、独自の管理指針の制定、関係機関などとの連絡協議会の設置などを行っています。
本県も留学生数は全国第三位であり、より一層の取組が必要であることは指摘をさせていただきたいと思います。
今回のような事案は結果として留学生制度自体や受入れ側の教育機関の社会的信頼を失うことにもつながり、福岡県、日本に対する悪い印象にもなりかねません。
適正な規模で丁寧な教育をしっかり行うことが本来あるべき留学生制度であり、真の多文化共生社会だと考えます。
最後に、本県の専修学校と各種学校における留学生の適正な管理の推進について、局長にお伺いいたします。
▶私学振興・青少年育成局長
留学生の皆さんは多くの留学先の中から日本を選び、そしてここ福岡県で学ばれています。
同校に在校する留学生の皆さんは、今回の事案を受け、大変不安を感じていらっしゃると思います。
まず学校や生活への不安、在留資格や転校の問題、課長が答弁でも先ほど申し上げましたとおり、こうした留学生の皆さんの不安が少しでも解消できますよう、福岡出入国在留管理局や国際局などと連携いたしまして、留学生を真ん中に置いた支援体制を整え、サポートを行ってまいります。
今回のような事案は本県のイメージの悪化にもつながりかねないものであり、留学生を受け入れている専修学校及び各種学校に対しまして、同管理局と密接に連携を取りながら、二度とこのような事案が発生しないよう指導強化を図ってまいります。
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